03. 帰りたくない。
「はぁ…」
家に帰りたくない…。
トボトボ歩いて、職場近くのコンビニに寄る。
日課と言っても、過言ではない。
「いらっしゃいませ」
その声は、数日前のあの青年を思い出す。
いや、その青年だ。
目が合って、軽く会釈した。
「あ…」
そう言えば、今日は野菜食べてないから千切りキャベツ買わなきゃ…。
キャベツおんりぃにすべきか少々何か混じっているものにするべきか…。
「うーん…」
悩んでいる時に、着信が。
………アイツ、か。
「はい…」
まだ何も手に取ってない状態なので、そのままコンビニを出る。
『俺、だけど…』
「うん…」
ここ何年かまともに会話すらしてないから、こんなものか…。
『いつ、帰って来る…?』
「今、コンビニ寄ってるからもうすぐ帰るよ…」
あぁ、何となくわかってしまった。
そうか…。
『じゃあ、待ってる…』
「了解です」
終話。
携帯電話を眺めて、暫く俯いたまま…。
「はぁー…」
深いため息が、思わず出てしまった。
よし。戻ろう…。
コンビニに入ろうとして、上を向いたら
「塩田さん…?」
「ぅわっ!!」
せ、青年っ?!
あまりにも近過ぎて、驚き、後ろに傾き倒れそうになる。
「大丈夫、…」
戻れそうな体勢だったのに、
「危ないっ…」
結果、青年に助けられたカタチになった。
「ありがとう、ございます…」
深々とお辞儀をして、顔を上げる。
「気を付けてください、ね…?」
青年はあどけない笑顔で、
「今日は何買って行くんですか…?」
と、コンビニの出入り口を開けて、どうぞ。とエスコートする。
「今日は…」
何買おうか悩んでたんだった…。
「サラダでスゴク悩んでたようですけど…」
「うん…」
そうなんだよ…。
でも、帰りたくないので丁度いいのかも…。
「ごゆっくり選んでください、ね」
軽く肩を叩かれて、また歳相応の笑顔を見せる。
「はい…」
青年よ、そのままで…。
と、暗に願ってしまう。
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