02. ノーカウント。決定。

「ごめんなさい…」

 一応、断る。

「そう、ですか…」

 一応、同棲しているヒトがいる。

 もうコイビトとは呼べないヒトだから、同居人かな…。

「でも、ありがとう…」

 年齢が近ければ、絶対、この私好みの青年を離さないんだけど、さ…。

 ちゃんと笑えてるかな…。

塩田えんださん…」

 頬に触れる手が温かくて、

「ご、ごめん…」

 触れられると甘えてしまうから、その手を拒否する。

「では、おじゃましました…」

 この青年の未来を考えて、これっきりで。

 うん。大丈夫。

「嫌だ…」

 顔を上げて青年を見ると、顔を伏せている。

 ここで立ち止まったら、戻れない気がしたので、

「じゃあ、ね…」

 帰ろうと歩みを進めようとしたら、

「駄目だっ」

 青年が私の腕を掴んで、

「まだ帰らないで…」

 引き寄せるように抱きしめられて、嫌じゃないから持て余した手を青年の背中にギュッとした。

 あぁ、ダメだ。

 今、そういうことされると流されそうで…。

「そろそろ帰らないと…」

 気付かれないように手を…カラダを徐々に離れて、玄関に。

「同居人が心配するから…」

 嘘、だけど。

「同居人って…」

「男だよ」

 面と向かって、キッパリ言う。

「大丈夫。同居人にはオンナがいるから」

 浮気相手、だけど。

「お気になさらず、だよ…?」

 暗い顔をしている青年の肩を叩き、

「じゃっ!!」

 不自然な笑顔で、お別れした。

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