01. ノーカウント。提案。

塩田えんださんが…、オンナだと思わなくて…」

 対象は男性ってことですか…。

 中性的な顔のせいか、男性に間違われることが多いけど…。

 いや、この胸のせいか…。

「それでも、ヤれたんですか…ね…?」

 その聞き方で、憶えてないことを察してください。

「本当に、お、…お、憶えてないんですか…?!」

 驚いている青年に、頷く。

「すみません…」

 直視できなくて、目を逸らした先にコルクボードがあって、写真が…。

「コイビトいるんですね…」

 イチャイチャな写真が多くて、ますます罪悪感を感じる。

「昨日、別れました…」

 青年は素早くその写真を外して、ゴミ箱に捨てた。

「そう、でしたか…」

 言葉の欠片を繋いで、何となく話が見えて来た…。

「すみません…」

 ツラい…。

 こんなワカモノが、悪酔いしたオバサンの餌食になってしまったなんて…。

「憶えてないから、なかったことに…」

 しようよ。って振り向いたら、

「本当にすみませんでしたっ!!」

 正座して頭を下げて謝る青年は、顔を少し上げて、

「塩田さんを見かけたら…」

 照れてる…?

 少し頬を赤らめながら、

「ついつい嬉しくなっちゃって…」

 ハッと真剣な顔に戻り、

「ううん。でも、塩田さんに甘えたのは事実ですから…」

 ごめんなさい。と頭を下げて謝る青年に、

「お互い様ってことにしよう…ね?」

 首を少し傾げて微笑んで、頭をナデナデして、

「ツラい、よね…」

 コイビトと別れるって、ツラいよね…。

「塩田さん…」

 私の顔を見るなり、タックルしそうな勢いで接近して来た。

「はい…」

 いや、これはタックルまがいのハグか…?

「好き、です…」

 は、い……?

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