第7話
ー次の日ー
教室に入ると、ほとんどいつもと同じ空気に戻っていた。でも一部違うところがあった。あいつが、静かだった。
意外だ。しかし僕は、少しイラついてしまった。光のことを思っているのか、光のことをああさせたのは自分だろ、なんで落ち込んでいるんだ、と思っていた。
僕の後に登校してきた、穩陽と話していても、心は晴れなかった。なんだか、心から、大事なものが失われてしまったような、虚しさがあった。
その日は、いじめがなかったか、アンケートを受けた。全員の前では言えなくとも、アンケートなら、とでも思ったのだろう。
そして、先生が何回も話しかけてきた。例えば、こんなふうに。
「静永。…その、猫間のこと、残念だったな」歯切れ悪く、言いにくそうに。
僕が答えないでいると、こうも言った。
「大丈夫か。でもあいつのことを考える前に元気出せよ」そう言って去っていった。
その言葉は、僕を無性に苛立たせた。慰めるつもりなら、言わないほうがマシだろう。大丈夫?そんなわけないだろう。考える前に?つまり、忘れろってことか?わざわざ言いにきた意味が、本当にわからなかった。
穏陽の方にも、先生は行ったようで少し、怒りをあらわにしていた。そして思原は、あいつと話していた。
[「なあ、お前…名前何だっけ」静永の言う、いじめの主犯とやらに聞こうとしたけれど、よく考えれば名前を知らなかった。
「オイ、その言い方はないんじゃねぇのか?」他の奴が言う。
「すまん。俺は思原視音だ。お前は…」
「俺は黒崎冬牙だ。何の用だ」
「聞きたい事がある。向こうで話したい」
「何に、ついてだ」黒崎は、少し恐れるように問う。
「…いじめについてだ」
言った途端、黒崎の周りの空気が硬くなる。そして黒崎の気持ちを押しはかるように、視線が集まる。
「…わかった。話す」そう言った黒崎は、真っ直ぐ先に歩き出した。
「黒崎のこと、傷つけんなよ」黙ってきいていた奴から、耳元で囁かれた。
意外と友達思いの奴らだ。黒崎の後に続いて歩き出しながら、そんなことを考えた。]
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