第9話



魂君と一緒に講堂へ向かう。

中に入ってみると、前に病院で見た某魔法学校の映画の小さい版みたいだった。

子どもたちはすでに席についていて、ご飯を運んでいる最中だった。

院長はまだいないのかな?

そんなことより、こんな講堂で毎日ご飯が食べれるなんて羨ましいー。



「おまえ、ここで食べれるなんて羨ましーとか思っただろ。」

「そそそ、そ、そんなことないですよ…?映画みたいだな、とか思ってないですから!!」

「思ってんじゃん。」

「うぅ…だって、だって!こんな大きい講堂だなんて思わないじゃん!予想のはるか上に行ったら羨ましいとかおもうじゃん“!!!」

「そんな勢いで詰めて来られても困る。」

「だってそっちが!!…はぁ、取り乱しました。忘れてください。」

「無理だろ。」

「そんな…!」

「そんなきゅるんみたいな顔しても無理だろ。諦めろ。」



もう、最悪中の最悪だ。


心は読まれるし、勢い余って顔の近くまで詰め寄っちゃったし。


はぁ、近くで見ても顔かっこいいよね。

もう、何考えてるんだろう。


ダメだ。


よし、諦めよう!



「はぁ、もういいです色々諦めます。」

「これでいろいろ諦めるのは早くないか?」

「いいの、これで。そうすればだるかった敬語も話さなくてよくなるでしょ?」

「お、おう。お前がいいならいいんじゃないか。」

「だから、早く院長に合って終わらそう?」

「わかったから、そんな焦らすなって。」



魂君は私が敬語じゃなくても何も言わないんだ。

ちょっと安心してる自分がいる。


そんなやり取りをしていると、講堂のドアが開き高齢の男性が入ってきた。


この人が院長かな?

高齢そうに見えるけど、腰は曲がってないから若く見られそう。

その人が席に座ると、騒がしかった子どもたちは静かになった。



「さて、食べるか。全ての命に感謝し」

「「「「いただきます!!!」」」」



皆でご飯を食べるってこんな感じなんだね。

全ての命に感謝か…。

人間だった時の私はあまり感謝してなかったな。


とか生前の記憶をたどってると―



「俺が!俺があんなにあんたに助けを求めていたのに!!!どうして!!!どうして…!助けてくれなかったんだよ…くそっ。」



いつの間にか魂君が院長の近くにいて、心の内を吐き出していた。

いつの間にそんなところにいたの!?



「学校に居場所が無いって、教員ですら敵だって言ったのに、あんたは『お前は諦めるのが早い。もう少し頑張れって』言ったよな?俺はその通りにしたんだよ!そしたら!!教員から辞めたらって言われてそれも相談したら、『そうか』しか言わなかったじゃねぇか!!俺はお前がそういうから頑張ったのに何も、何も変わらなかった…。どうしたらよかったんだよ…。」



私は彼の叫びをただ聞いているしかなかった。


前に話してくれた時は淡々と記憶をなぞるような話方だったけど、今日は気持ちを全てぶつけてる感じがする。

院長を信頼してたからこそ、だよね。



「孤児院は楽しかったよ。弟みたいな子たちがたくさんいたからさ。でも、それだけじゃ学校で過ごしていくには足りなかった…。俺は弱い。あんたが何とかしてくれるって思っちまってた。だから、俺はあんたを恨むよ。」



“恨む”そう言って魂君は講堂から出て行ってしまった。

皆の食事が終わり、子どもたちが部屋に戻る途中、



「ねぇ院長先生。」

「どうした?」

「いつになったら僕たちの部屋にある机のお荷物のけてくれるの?」

「あぁ、まだ片づけてなかったね。もう少し待ってくれるかい?」

「もう少しってどれぐらい?」

「もうすぐ49日だからね。あとちょっと…。」



そういって、院長と子どもが見つめていた先には机に魂君の生前と思われる写真がいっぱい飾られていた。






-つづく-








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