第7話


「私たち天使は皆もとは人間だったんです。」




そう、私たち天使はもとは人間だった。


ただし、だれでも天使になれるわけではなくて、幼いころに亡くなっているっていうことが第一条件。


その後、神によって選ばれたとかなんとかって言って名前を与えられた後、天使にされるんだけど、なりたくてなった訳じゃないからみんなの不満はすごい。

しかも天使になると、最低でも10年は働かないといけなくて、それが終わったら転生することができるの。

みんな幼いから、社会勉強のために私たちよりもいくらか人生経験が豊富な魂を導く天使の役割を与えられるんだって、最初の説明で言ってった気がする。


あと何だっけ…あー、そう大事なこと忘れてた―


私の与えられた名前は “アズ”




「…黙っていたのは、これを知られてしまうことで今までと接し方が変わってしまうのが怖かったんです。しかも掟を破って地下に連れていかれるのも怖かった。だから知らない今のままがいいと思っていました。もしこれを聞いていたら今までと態度は変えないでほしいです。」



話がひと段落してから彼の方を見てみたけど呼吸で方が上下しているだけだから、もしかしたら寝ちゃったかな。

長く話しすぎちゃった。

次話すときはもう少しちゃんと話せるようにしないと。



「おやすみなさい。」





―次の日―


朝の陽ざしは眩しいの…。

まだ寝てたいのに寝れない。



「おはよう、ございます…。」



まだ彼は寝ているみたいだね。

昨日の話は聞いていたのか分からないけど、一回話してみると意外と後ろめたさみたいなものは無いかもしれない。



「んーっ!ふぁー、はよ。」

「おはようございます。良く寝れました?」

「あぁ、ちょっと体いてぇけど、布団で寝れたからかいい気分だ。」

「それならよかったです。」



今のところ、夜の事は聞いてなさそうかな。

昨日話すのに結構勇気出したから次話す時のにちょっとだけ時間ほしいな…。

また夜にでも話そうかな。



「そいえば、今日の事なんだけどさ、夕方でもいいか?」

「私はいいですけど、夕方に行く理由があるんですか?」

「夕方なら、院長がいると思うんだ。あの人の顔は最後に見ておきたい。」

「そうですか。わかりました。」



いろいろ複雑な心境でも孤児院は楽しかったって言ってたし、院長はお父さんみたいな人だから挨拶したいのかな?

夕方までどうしようかな。

改めて一緒にいる時間って初めてな気がするから緊張する。



「なぁ、天使ってさ、担当がいないときどうしてるんだ?」

「突然どうしたんですか?」

「いや、気になっただけだ。」

「今の世の中、担当がいないってことはほぼないです。」

「…それは、なんか複雑だな。」



そう、この世の中では毎日のように自殺者が後を絶たない。

それに加えて、いくら技術が進化したとはいえ、救うことのできなかった命も存在するわけで…。。



「まぁ、私たちが暇であればあるほどいいんですけどね…。暇なときは魂を探しに行ったり、人間を観察します。」

「なんで人間観察するんだ?」

「接する対象が人間なので、見ておいた方が流行というものが分かるかなと思って。」

「あぁ、なるほど。」



私たち天使は失った命を導くことが多いけど、新しい命の誕生も見てたりする。

新しい命の誕生は人間以外ももちろん感動するけど、やっぱり人間のはあこがれもあるからか毎回感動しちゃうんだよね。

いつか転生したら、って。



「そろそろ行くかな。」

「大丈夫ですか?」

「あぁ…。」

「じゃあ行きましょう。」


顔が少しこわばってる気がするけど、本人が覚悟を決めたなら付き合わないとだよね。

無事に終わりますように。





-つづく-








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