現代コメディ短編「老いは未だ見えず」
西城文岳
本編
「たかし~おじいちゃんテレビに出てるわよ~」
「え!?ホント!?」
ぼくはおじいちゃんが好きです。
「こっかい」と言うお偉いさんたちが話し合っている場所でよくおじいちゃんはよくあらわれます。
『いたぞ!石山さんだ!』
『あの人ほんっとに!どっから忍び込んでいるんだ!』
『グワーッ!』
おじいちゃんは広い部屋の一番目立つ席真ん中の席に座っていたそうです。
『はやく捕まえろ!』
『何で去年まで総理大臣やってた人がこんな暴れんだよ!』
おじいちゃんはそうりだいじんと言うとてもえらい人でした。今もこっかいで質問していたおじさんにチョークスリーパーをかけています。
『がぁぁぁっ!』
『それ以上いけない!』
『はやく!この老害はやく何とかしろ!』
いつも、おじいちゃんは制服を着た人たちに連れられてどこかへ行きます。
手にわっかをかけられた後うちに帰って来たおじいちゃんに僕は純粋な疑問をぶつけました。
「どうしておじいちゃんはこっかいで暴れるの?」
「儂はもう八十八だ。いつ死んでもおかしくない」
「おじいちゃん、しんじゃうの?」
「いや、まだ死ぬ気はないさ」
「じゃあどうしていつもこっかいであんなに暴れるの?」
「今あそこにいるのは自分の利益のことしか考えとらん奴らだ。せっかく儂が上手く不景気から立て直したのに、アイツらまた自分のとこだけにしようとしやがるんだ。儂にはそれが一番我慢ならん。だからろくでもない事を抜かす奴は儂直々にとっちめてやろうってな」
「そうなんだ!おじいちゃんはみんなの為に頑張っているんだね!」
そう思っていた時期が僕にもありました。
大きくなって僕には分かった事があります。
国会って大乱闘するところじゃないんですね。
『ぎゃああああ!』
『アイツいつまで生きてんだ!?』
『儂は生涯現役じゃあ!』
老害って呼ばれる人って、老けてヤバい人と言うよりか、老ける前からヤバい人なんだなって。暴れるのは別にいいけど真面目に働いてる人にもとばっちり行くので場所と状況を選んで欲しいです。
政治家の皆さん、うちの祖父がすいませんでした。
現代コメディ短編「老いは未だ見えず」 西城文岳 @NishishiroBunngaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます