第2話
受付表の番号がモニターに表示されると、その診察室に向かう。入り口の扉をノックする時が一番緊張する。この扉の向こうの先生は、どんな表情で待ち、第一声は何なのか、怖くなる。いつものことだが慣れない。
ノックして扉を開けた。
「こんにちは、失礼します」と挨拶して、車椅子のあやめを奥に止めると、私は隣の椅子に座るいつもの儀式だ。
「白松あやめさんですね、今日は痛いところとかないですか」と担当医が話し掛ける。
「え、特には痛みも違和感もないですよ」と妻が答える。
私は額にあぶら汗をかいてしまう。
デスクの二つのモニターを担当医は見比べながら、キーボードで入力をしている。もう一度、あやめの方に向き直るとこう言った。
「今日の検査結果で身体に違和感がまるでないのは、奇跡的と言ってもいいでしょう」と医師。
私は神のご加護かと確信した。
担当医は言う。
「ご主人もですが、今から入院の手続きをして下さい」
「どういうことですか?」と私。
「検査結果で判断すると、奥様は内臓疾患が相当に進んでいて、ほとんど機能していないと言ってもいいんです。つまり、言い出しにくいのですが、余命がほとんどない状態です。ですので、終末、緩和ケアのホスピス病棟に入院してもらい、経過を安静に見させてもらいたいのです。お分かりですか?」と担当医。
「わあーっ、神よ!なんたる試練!」
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