仕事


仕事は、大変だけどやりがいがあった。

先輩に付いて、作業を見ながら覚える。



工具も機械も、初めて見るものばかり。



「あれ…どっちがニッパーだっけ…」



名前を覚えるところから大変だった。



「こっちだよ。」



先輩がニッパーを手に取って私に渡す。



「あ、ありがとうございます…!」



「…ふふ、絵を描いて覚えようとしてたの?」



先輩が私のメモ帳を覗き込んでいる。



「あ、はい…。」



ちなみに、絵のセンスは壊滅的。



「私もねー、未経験で入ったの。大変だよね。なんでも言ってね。」



「そうなんですね…!嬉しいです、ありがとうございます!」



「柊ちゃんって、素直で可愛いね。」



「え?す、素直、ですか?」



「うん。ちゃんとごめんなさいとありがとうが言えるし、すごく頑張ってるのわかるし。」



「え…そんな…」



「!?ご、ごめん、何か傷つけること言った!?」



気付けばボロボロと泣いていた。



「す、すみません…う、嬉しくて…。」



「…ふふ、よしよし、可愛いやつめ。」



私は、少しずつ、素直になってきているのだろうか。







家に帰り、ぼんに高級イカソーメンをあげる。



「きゅわわぁ!?」



「ふふ、今日は特別。たんとお食べ。」



ぼんはガツガツと食べ始める。



「…ねぇ、ぼん。私、ごめんとありがとが言えるようになったみたい。ぼんと一緒に暮らし始めて、たくさんぼんにごめんとありがと言ってたからかな。」



「どっぼ。」



「ん?」



「んきゅ!」



ぼんが、高級イカソーメンを一本くれた。

よくやった!と言わんばかりに。



「…ふふ、ありがと。」



今日の酒のつまみは、高級イカソーメンになった。

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