面接


面接は雑談から始まった。

そして、ひと通りの質問に答える。



「初めて会った時から思ってたけど、笑顔で雰囲気がいいね。」



「あ、ありがとうございます…!」



––初めて言われた。



「やっぱ、サービス業の賜物かな?」



「…いえ、本当は、もっと堅くて形式ばったことしかできなくて…。いつも、もっと素直にって言われてきました。…でも、少しわかった気がするんです。今まで、怒られることがこわくて取り繕って…自分のことばかり考えてたから、ダメだったんだなって。…あっ、すすすみません!えと…えと…!」



「いいよいいよ!続けてみて。」



––本当に続けていいのだろうか…。ちょっとは良いこと言わないと…。



––モゾッ。



––!…うん。



「…でも、気付き始めたばかりで、答えが出ていません。これからは、いろんな人を見て、いろんな人の立場に立って考えて、何が間違っていたのか、何が私らしさなのか、見つけていこうと思っています。」



「うん、そうか。」



––ダメ、だった…?



「うちは、人柄重視の会社なんだ。人の力があってこその会社だからね。特に、技術職は柔軟性と素直さが大事。柊さんは大事なことに気付き始めてる。とても良いと思うよ。柊さんはまだ若いから、これからもっとたくさんのことに気付いて、成長できると思う。よく気付けたね。素晴らしいと思うよ。」



「…ぅ…ありがとう…ございます…。」



思わず涙が出た。



「いろいろ苦労してきたんだね。でもまだ一歩踏み出したところだから、これからも苦労することがあると思うよ。」



「はい…!それでも、私はこの気持ちを大切にしたいです…!」



「うん、いいね。じゃあ、うちで働いてみる?」



「…え?」



「つまり、採用ってこと。実は僕、ここの社長です。」



「え、あ、え!?」



「ごめんね、黙ってて。」



「あ…いえ!本当に、いいんですか…?」



「うん。しっかりフォローしていくけど、初めての作業がたくさんだと思うから、最初はちょっと大変かもしれないけど…それでもいいなら。」



「はい!頑張ります!ありがとうございます!」



「こちらこそ。よろしくお願いします。」




仕事が決まった。






「ありがと、ぼん。」



「きゅ!」



帰りに高級スーパーに寄り、高級イカソーメンを買った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る