友達
休みの日。
ぼんの家を新調するため、
ぼんとクラフトショップへ来た。
生地にちょっとこだわろうと思って、100円ショップはやめた。
可愛い柄を見つけて、満足しながら店を出る。
「ぼん、今度は夏仕様だよ〜。」
「んっきゅ!」
カバンの内ポケットにいるぼんに話しかけた。
––ドンッ。
「ッあ!すみません!」
下を向いていたので、肩がぶつかってしまったようだ。
「あ、いえいえ!こちらこそ、よそ見してしまってて、すみませんでした。…あっ。」
彼の視線を追うと、スマホが地面に転がっている。
彼がスマホを拾い上げると…画面がバキバキにひび割れている。
「…!す、すすすすみません!弁償します!」
「いやいやいや!俺のよそ見が原因だから!じゃ!」
彼はそそくさと立ち去ろうとする。
私はガシッと彼の腕を掴んだ。
「…この後、お時間ありますか。」
「え…」
私は強引に、近くの携帯ショップへ彼を連れ込んだ。
店員に修理の見積もりを頼むと、加入していた修理サポートのおかげで、1万円で済みそうとのこと。
「これで修理してください。」
彼に1万円を渡す。
「いや、ほんとにいいって!」
彼は受け取ってくれない。
「借りを作りたくないので。」
「いや、借りでもなんでもないし…」
「でも…」
「うーん…じゃあ、ランチ奢ってくれない?」
「ランチ、ですか?」
「うん!」
私たちは近くのファミレスに入った。
料理を食べながら、他愛もない話をした。
彼は私の1つ年上で、
ITエンジニアとして、この近くの会社で働いているらしい。
「すごいな、ジュエリーの職人だなんて!」
「いや、まだ職人とは程遠くて…南さんの方がすごいですよ。ITエンジニアだなんて!」
「俺もまだまだ勉強中だよ。でも、仕事は楽しいかな。」
「…私も、今の仕事すごく楽しいです。やりがいもあって、新しい発見がたくさんで!」
「うん、柊さん、すごく生き生きしてるもん。こっちまで楽しくなる。」
「…そんなモロに出てるのは恥ずかしいかも…」
「あははっ!そうかな?」
時間はあっという間に過ぎていった。
「今日はありがとう。」
「いえ、こちらこそ!すみませんでした。」
「それはもう気にしないで!…あの、良かったら、連絡先交換しない?」
「へ?」
「良かったら…友達になりませんか?」
「!…はい、ぜひ!」
連絡先を交換し、家に帰った。
家に着くと、すぐにシャワーを浴び、買い物袋から布を取り出す。
そして、チクチクと裁縫でぼんの家作りを始めた。
––♪
メッセージだ。
–南です。今日はありがとう。
また、お誘いしてもいいかな?−
私は、すぐに返信した。
–こちらこそ、ありがとうございました!
はい、ぜひ!お誘い待ってます!–
「ぼん〜!ぼんのおかげで友達ができたよ!」
「んきゅ?」
「よし、今日中に新しいお家、作っちゃうぞ!」
「きゅー!」
夏仕様の涼しげな家が完成した。
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