けんか
「うーん、言葉ではそう言うけど、熱意というか、そういうものが感じられないかな。もっと素を出してみて。」
「は、はぁ…」
うん、一発で決まんないよね。
「取り繕わなくていいよ、素直な君が見たい。」
「す、素直…ですか…。」
うん、次。
「面接官はなんでもわかっちゃうから。形式ばった答えじゃなくて、素直に喋っていいのよ。」
「えと…えと…」
結果、全滅。
また、やけ酒。
「素直素直素直素直…!!素直って何!?私はこういう人間!これが素!…ずっとずっと怒られないように、迷惑かけないように取り繕って生きてきたし、常に正しい答えを探してきた!今更どう直せっていうの……。誰か…教えてよ…。」
机に突っ伏す。
「…どっぼ。」
「…何。」
机の上にいるぼんが、イカソーメンをこちらへ差し出している。
いつもはやらんけど、今日だけ特別だ、と言わんばかりに。
「…いらんわ。」
「…!んむっ!」
怒った。
イカソーメンを、床にべちんッと叩きつける。
「…ぼんに私の気持ちなんか、わかんないよ。ほっといて。」
「…んきゅきゅ。」
顔を私の頬に押し付けてくる。
「…んんぅんうっざい!!!なんなの!!」
目が合う。
ぼんは怒っている。
「きゅ!」
「は?」
「どっぼ!ぼん、んーん。」
首振ってるっぽい。首ないから、よくわからん。
「ぼん!どっぼ、んーん!」
また振ってる。首ないのに。
「…ぼんは私のことわかんないけど、私もぼんのことわかんないって?」
「ん!」
––そっか。そうだよね。ぼんだって、もしかしたら私に出会うまでは苦労してたのかも。なんせ得体の知れない奴だし。
「…得体の知れない奴が、お手本のことばっか言ってもやっても、なんも伝わんないか。」
ぼんを撫でる。
「…ごめんね、ぼん。もうちょい頑張ってみる。」
「んっきゅ!」
「…素直な私って、なんだろね。」
「んきゅう。」
ぼんがビール缶を見つめる。
「酒飲みの私が素だって?おい。」
「ぼんっ。」
ぺしっとぼんを叩いたら、ぽよんと跳ねた。
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