第3話 ※二人は「中宮七不思議」の一つを調査しに来ています
「ぷくく、部長は怖がりさんなんですねー」
「貴っ様騙したなああぁぁぁ!!!!!」
酒崎は怒髪天を突いたかのように顔を真っ赤にさせ、腹を抱えて笑いこける黒子にの前に立ち塞がった。
ちなみに、二人がいる場所は辺りが夜の帷に包まれた上り坂の中腹である。
「あははははは!部長!あんなに怖がっちゃって!可愛い!可愛かったですよ!普段の堅物な部長とのギャップが!ギャップ萌えすぎます〜!!!」
「貴様ァ!今すぐそのお花畑脳から出生時以降全ての記憶を消し去ってやる!!」
「できるもんならやってみてくださーい!!」
「こんのおぉぉぉ!!!!」
「や、やめ肩を掴まないでください!」
「問答無用!神の下に断罪を……」
ニュッ
「!?!?!?!?」
何の前触れもなく、黒子はその顔が一気に青ざめた。
「どうしたんだ……?」
「い、今……あたしの足元を……何かヌルッとしたものが通り抜けたような……」
「ばばばバカな事を言うな!俺は感じなかったぞ」
「ききき気のせいですよね気のせい!」
「……おい貴様、なぜ俺の背中に隠れている……」
「えっ、いやこれは……」
酒崎の背後にしゃがこみ、コートの裾を掴む黒子。
見ると、顔面蒼白でぶるぶると震えているようだ。
その弱弱しい姿を一瞥するなり、弱みを握った酒崎の顔はぐにゃりと歪んだ。
「ほぅ、そうかそうか。頭の蠅を追えとはこう言うことか」
「なんですかそのことわざ……も、もうちょっとだけ隠れててもいいですか?」
「構わんぞ眼福眼福!俺は貴様の醜態をきっちりとこの目に焼いておこう」
「くぅぅ、部長性格わっる!これだから鋼鉄の風紀委員長とかいうクソダサいあだ名がつけられるんですよ!」
「規律に厳しいと言ってくれたまえ。俺は風紀を乱す愚か者は構わず断罪するぞ。特にお前」
「あっ、そろそろ行きましょうかぁ」
更なる弱みを突き刺されそうになったために、黒子はさらっと立ち上がり歩き始めた。
五分後。終止無言で道を進んでいた二人だが、いよいよ我慢の限界が来たので黒子は酒崎の手にある真っ白な本を一目見て、
「ねーもう一度その本見せてくださいよ」
「別に構わんが、副部長にこの本が読めるとは思えんぞ」
「ふふん!こう見えてもあたし前回の英語の定期試験学年56位ですから!」
「俺は二位だ」
「マウント取りきっつ!」
「特大ブーメラン刺さってるぞ」
軽い口論を挟みながらも、酒崎から手渡された本を黒子は歩きながらぱらっとめくる。がっ、
「何語ですかこれ」
そこには、この世のものとは思えない謎言語の羅列がページいっぱいに記されていた。
「俺にも分からん。スマホの翻訳機能で調べてみたがどの国の言語にも該当しなかった」
「解読できないなんて悪魔を復活させる以前の問題ですね」
「復活させる気は元よりないわ。悪魔の呪いとやらを調査するだけだ」
「はぁ……」
歩き始めて数分後。一向に見えてこない目的地に向かって進む黒子の肌を、夜の冷気が摩った。
「さ、寒いですね……もっとくっついてもいいですか?」
水を浴びた後の猫のようにブルブルと身震いした黒子は、無意識に酒咲の剛腕に自らの肩を当てる。黒子は寒がりなのだ。
だが、酒咲はくっついた黒子からスゥっと離れてしまい。
「断る。ちゃんと厚着して来なかったキミが悪い」
「くぅぅこの人でなし!仮にもあたしは病み上がりなんですよ?」
「もう一年も前の話だろ!今は健康体そのものじゃないか!」
「見た目だけで決めつけないでくれませんか?一応今でも通院はしてるんですよ」
「そうなのか?」
「えぇ、たまに部活休んでるじゃないですか」
「そうかあれはサボりではなくちゃんとした理由があったんだな」
「部長のあたしへの信頼度が低すぎる件」
黒子が下を向いて呟いていると、何を思ったのか酒崎はコートを脱いで黒子に被せた。その所作に、黒子の頬はほんのり赤くなる。
「そうか。そんなに寒いのなら俺のコートを羽織れ」
「あ、ありがとうございます……部長は寒くないんですか?」
「俺は北国育ちだからな。都会の夜の冷気など屁でもないわ」
「ひゅー部長かっこいー思わずときめいちゃいますー」
「どうした副部長?今日はなんか変だぞ」
「いや、いつもはもう寝てる時間なんで……なんか、アガっちゃって」
「ふむ、もう九時か。調査を終えたら速やかに帰宅しよう」
「部長ぉ~あたしの家まで着いてきてくださいよー。夜の道は何が起こるか分からな
いんですから」
「ふむ、怖いと言うことだな!」
「べべべ別にそういうことじゃないですけど?あたしみたいな弱々しい女の子って?ヤバい奴らから見たら格好の的じゃないですか!部長元柔道部ですよね?そう言う奴に遭ったら片っ端からぎったんばったんしちゃってくださいよ!」
「なら最寄の交番に寄るか?俺よりも頼りになるぞ?」
「警官に付き添われてたら補導されてるみたいじゃないですか!マ……親が見たらびっくりしちゃいますよ」
「まあ途中でぶっ倒れられたら困るしな。仕方ない、付き添って……」
「ぶ、部長……」
見ると、黒子はあわあわと口元を押さえながら、もう片方の手で道の先を指さしていた。
「着いたみたいですよ……」
黒子の視線の先を、酒崎が見つめると。
「な、なんだこれは……!?」
そこにあったのは、廃墟と化した教会だった。
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