第3話 ボクシンググローブ

「あなたは私に1000円を支払いまーす!そして1分間、私を好きに殴って下さーい!しかもーー私を倒す事が出来たら賞金1万円!頑張っていきましょーー!」



源さんは慣れた口調で周りの観客たちにも聞こえる声量で言った。そんな源さんの口上に釣られて、道行く人々がさらに集まってきた。



「真一!倒せよーーー!」



「カッコいいとこ見せてくれよーーー!」



先輩たちは無責任にはやし立てる。



先輩に貰った千円札を源さん手渡すと、源さんは丁寧に千円札を受け取りポーチにしまった。



「はーーい!では、このグローブ付けて下さいねー!」



そう言って源さんは真一に使い古されたグローブを手渡した。見た事はあったけれど、実際にボクシンググローブを付けるのは初めてだった。



装着したグローブの感触を確かめる為、突きを数発出してみた。



「おっ!今度のお兄さん格闘技経験者みたいだぞ!」



ギャラリーは真一のデモンストレーションを見て、盛り上がっていた。



思いの外、重いな・・・



空手はサポーターのような薄さなのでスピードある突きを出せる。しかし、ボクシンググローブは“オンス”という単位でグローブの厚さが変わってくる。1オンスは28.349523125グラム。



当然、今、真一が着けているのは練習用の16オンス。453.59237グラム。



「それではいきまーーーす!」



酔ってるせいか足元がふらつく。タイマーの電子音が鳴り始まった。

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