第2話
ゴルゴとエミリーの宴が始まった。
ゴルゴは白いTシャツ姿、角刈りの額にうっすら汗が滲んでいる。
「早く飲みてぇ。。」
エミリーは長い金髪を指に絡ませ、ぬいぐるみを抱きながらコップを出した。
今夜は久保田祭りらしい。
にごり久保田、久保田万寿の一升瓶、久保田紅寿の3本。香ばしく炙ったスルメの横には山盛りマヨネーズに七味。
先程の人参は桜海老とラディッシュのこんもり天麩羅に。
色鮮やかなかき揚げにエミリーは目が奪われている。
もう一品は牡蠣と小豆島オリーブのオイル漬け。
奥の一皿はさつま芋と昆布の煮物。
「大将が突き出しの新メニューまだかって」
「全部良さそ〜」
チーン、とレンジが鳴った。
ダダっと電子レンジに走り寄るゴルゴ。プリン皿を触って悲鳴を上げた。
「アツッ!!」
「もう、毎回じゃーん」
「今夜は筋肉スイーツさんの新しいレシピ
なんだよ!!朝から楽しみにしてたんだ!」
「新しいスイーツユーチューバーかい」
「先に頂きまーす」
「どーぞ」
エミリーは瓶を開けてトクトクとコップに日本酒を注ぎ、水のように飲み干した。
「どすか?」
「うん、濁ってる。濁り酒だけに」
「そんなの当然っしょ」
「ちょいスルメで景気づけ」
エミリーはイカの頭に齧りつき、再び
コップを開けた。2杯、3杯。。
「半瓶いかないと飲んだ気しないの。
ね、ジロジロ見ないでくんない?」
「すみません、毎晩よく飲むなーと思って、つい」
沈黙が1分ほど。空気が高3の三者面談くらい重くなる。
その間にエミリーのキラキラな瞳は光を失い、ゴルゴは猫背になっていた。
ターン、とエミリーがコップを置く。
「ハァ?アンタが下戸なのに日本酒がすすむつまみを開発しなきゃならんからアタシが味見してあげてんでしょ!!誰のせい?」
エミリーの横にはカラの一升瓶が転がっている。かき揚げ、煮物はもう無い。
「は、は、早くね」
「ぜんぜん。もう冷めたんじゃない?」
「そかな?」
ゴルゴは冷蔵庫から取り出したプリンをそのまま口にした。
ごっくん。。ごっくん。。
喉元を通り過ぎていく甘い濃厚な卵液のゆるい塊。。
「うんめーーーっ!!」
「かーーーーっ!!」
額の汗を拭う。この一口の為に1日働いていたのだから。
「さいっこうだな」ガッツポーズを決めて
天井を仰ぐゴルゴ。
「プリン飲むなよ。。」
エミリーの口からスルメの足が飛び出ている。
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