第七十七話 新月と満月(下)
娘に気を許すな。遠からず悪魔は帰って来るぞ。
――
===========================
再び、保健室での作戦会議迄時を遡る。
「あの、そういえば気になってるんですけど、
『ええ、出来るならね。だから作戦の中で再びあの
「でもその時、あの
そんな彼女と、その態度に不安を覚えた
「心配には及びませんよ。
彼は
「ずっと不思議な事が御座いました。どうして『闇の眷属』達の血は紫色なのか。それは『青い血』と何か関係が有るのか。」
「有った、ということですか?」
「闇の眷属とは、平たく言えば実験体だったのです。肉体を『青い血』に馴染ませる為に、まず常人の血と『青い血』を混合して人体実験を行った。その為に、最初は死人で実験をした。それが
「
「最後の男はまあおまけでしょう。兎に角、重要なのは『青い血』に入れ替える工程は混ぜる手法の延長に在るという事です。」
闇の眷属の紫の血と『青い血』の関係から、
「思うに、
「どういう方法ですか?」
「第一合宿場の地下に安置されていた『青い血』の成分には一つの性質がある。それは人間の血液と混ざった時、血液の一部を侵食して同化するのです。イメージとしては、丁度白い生地に青い絵の具を混ぜた水を染み込ませたと考えれば宜しいでしょう。布が絵の具で青く染まる様に、『青い血』の成分は人間の血液を『青い血』化してしまうのです。勿論、成分が少なければ色は
『成程、その布が染まり切っていない、元の人間の血が残っている状態が紫の血、完全に染まり切った状態が青い血という事ね。』
『ならば青い血の分離とは即ち、厳密には青い血の成分の分離。元の生地、人間の血は体に留まり続ける、と。』
「そういう事です。彼女の血は完全に『青い血』と化し、『青血の至高神』の力を我が物としている。しかし、『青い血』として完全であるが故に人間である彼女の体には本来馴染まない。それを
『つまり、あの女も唯〝青い血〟を分離しただけで死ぬわけではない、と。その後、続いて本人を肉体から分離し、
「成程、
『
「まあ、彼女が犯した全ての罪を背負う事は無いでしょうし、
『社会的制裁の話ではないわ。道理の問題よ。』
「勿論、そうでしょうとも。しかしそれは間違いなく過酷な道でしょうな。」
険しい表情で嘆息する
『良いの。
「
だが同じだけ、彼女も間違い無く苦しむのだ。二人の生きる道は
『
「ええ、
最後の戦いを前に、
そして、大きな困難を超えて二人は
後は、血液から『青い血』の成分を、肉体から
☾☾☾
頭を掴む
次に、縋り付いている体から暴虐的な強靭さが失われて行くのを感じた。密着した相手が得体の知れない化物から極普通の少女に戻っていく様な気がした。『青い血』の分離が進んでいるのか。
同時に、
「
頭に置かれた手は
「
「
「
やっと、やっと自分の仕事を手放しに誉めて貰えた。
「ええ、
彼女の手が
「
「ええ、そう……。」
背中の手が
「
「え?」
彼女の言葉を理解する前に、強い血の悪臭が
「あ……え……?」
後ろを振り向いた
「う、嘘……!」
「
理解が追い付かない、否、脳が拒んでいた。しかし、状況は火を見るより明らかだった。
「そんな、どうして?」
「何を不思議がっているの?
「どういう事か教えてあげるとね、『青い血』を分離される前に
「勝ち目は……無かった……。」
「そうよ、言ったでしょう。これが都合の良い、希望的観測の後に突き付けられる現実というものよ。」
恐ろしい予感にどんどん呼吸が浅く、早くなる。
「
「勿論、殺したわよ。
「やっと二人切りになれたわね、
あの
でも本当は、誰よりも
そんな
「うわああああああっっ‼ あああああああああああああっっ‼」
肺の奥底、胃の奥底、腸の奥底、体の芯から全てを吐き出すかの様な、嘆きの絶叫だった。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ、
その天女の様に柔和な
「さあ、この汚らわしい
全ては終わった。全てを奪った悪女は、夜空に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます