第六話 私立假藏學園
父よ、彼等を御許しください。彼等は何をしているのか、分からずに居るのです。
――ルカによる福音書、二十三章より。
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私立
しかし、創立の地にも別の学校が残され、
尚、正確な移転の理由は不詳であるが、
元々
外壁一面にスプレー缶で描かれた下卑た落書きは一切消される気配も無く、逆に色褪せた様子が年期すら感じさせる。又、創立者である
そんな
「オラァッ‼ 雑魚共が‼ 登校料一万は前もって用意しとけっていつも言ってるだろうが‼」
「チンタラと待たせて苛付かせる奴は一秒に付き肩拳一発! 金足んねー奴は顔面正の字刻み! 正の字完成で呼び出し‼ 毎朝毎朝言わせんじゃねーよ‼」
今日も今日とて、
「なあ、千円で後を譲って呉れよ。」
「舐めたこと言ってんじゃねえよ。てめえが前に来いや。」
「や、
「千円で足りるかよ
一人の大柄な眉無しの強面男が列の順番を無視して二人の検問男の前まで肩で風を切って歩いてきた。
「
「
「
「順番抜かして来るとは良い度胸じゃねえか! てめえだって例外じゃねえぞ⁉」
蛇舌の男が一回りも大きい
検問の内片方は之でノックアウト、残った一人は腰が引けて終い、冷や汗を垂らしている。
「お前等、
「
刺青男は尚も減らず口を叩いたが、すぐさま彼にも鉄拳が叩き込まれ、その場に伸された。これこそ、列を成す弱者達が後列を奪い合っていた理由である。暴力に由る理不尽な支配を打ち破る更なる暴力も又、この魔境には常に存在しているのだ。
「
この場の暴力に由る支配構造を拳二発で塗り替えた
「あ、ありがとう
先頭に居て辛うじて難を逃れたごく普通の弱々しい男子生徒が恐る恐る
「なあ、お前等も
「え?」
「即答しろや‼」
男子生徒は突然の問いに戸惑っている間に胸倉を掴まれ、爪先立ちにされた。
「即答出来ねえって事は
理不尽に凄まれ、男子生徒は涙目で首を振った。否定の言葉を出そうにも、首が絞まっていて息が出ない。
「思わねえって事は、
「よーしお前ら、今日から全員
どう足搔いても弱者は強者の暴力に由る支配構造から逃れられない、それがこの
☾☾☾
不良としての能力が必然的に欠けている
始業の鐘が鳴り、この腐敗した施設が一応は教育機関であることを思い出させる。
無論、授業中である筈の教室には勉学に励む生徒の姿など皆無であり、携帯ゲームに興じる者、賭け事をする者、化粧をする女子生徒等が無秩序を
そして、そんな教室に遅れて入って来たのは、レジ袋に大量のパンとパック飲料を抱えた、一見おとなしそうな男子生徒二名である。
「か、買って来ました‼」
「遅えぞ愚図‼」
彼等は遅刻ではなく、授業中にも拘らず校外のコンビニまで買い物に走らされた下僕達である。二人の額と頬にはそれぞれ書きかけの正の字の様な傷痕が付いている。彼等は元
「はい、じゃあイケメン君達にお仕置きアンド鍛え直しターイム!」
「ヒイィッ‼」
「誰かこのイケメン君達と遊んであげても良いって女子居るー?」
「はーい‼ 私やりたーい‼」
買い物袋を受け取った染髪とピアスの不良男子、髪と眉の無い不良男子が二人を羽交い絞めにし、二人の濃い化粧をした不良女子が手招かれる儘に楽し気に寄って来た。そし彼女等は後ろに足を大きく振り上げ、勢いよく拘束された男子生徒達の股間を蹴り上げた。
「うごオッッ‼」
「ぐひぃっ‼」
「ははは、女の子は大人しいイケメンより強い
因みにここで言う「イケメン」とは顔の良い男というそのままの意味ではなく、顔を正の字に傷付けられた者達を皮肉って言う彼らなりの隠語である。
つい最近まで
それは毎朝生徒に十万円の支払いを命じ、支払えない者には滞納日数に応じて顔に剃刀で「正」の字を一角ずつ刻む、と云った凶行であった。これによって目立つ顔に傷を付けられた生徒は、支払いを拒む胆力も無い弱者であると事情を知る者には一発で判別されてしまい、無関係の不良からも事有る毎に金を毟り取られたり、顎で使われたり、理由無き暴力被害を受ける。
だがそんな邪悪な支配が今、一つの事件に由って崩壊しようとしていた。
「オウコラ‼
突然、教室の前の扉が開き、一人の厳つい眉無しの大男が入って来た。最早誰も授業中である事など気にしておらず、教師もエアガンを射的される位で殆ど無視されている。
「
教室の隅で机に足を乗せて
「
「
札付きの不良が集まる
だがそこに明確な基準は存在せず、長く
「畜生……。何で
「何が
「何が違うんだよ区別なんか付かねえよ……。お前等の伝説なんか誰も知らねえよ……。」
「
元
「
「あの人も大概だろ……?」
二人の声は小さかったが、それでも
「
「あの野郎も
由緒正しき
尚、
そして、元
一方、この
「
「
二人の意見は一致した様で、互いに眼を付け合いながら教室を出て行った。
尚、再三繰り返すが、一応授業中である。
☾☾☾
しかし、その場所にやって来た二人の上級不良は驚愕する。
「な、何じゃこりゃあ⁉」
「死体⁉ 四人も⁉ しかも
「お、おい見ろ
「あ、
二人は揃って祠の方へと目を遣った。
その黒い闇の
「うわあああああっっ‼」
これは丁度
そして同日同時刻、
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