第五話 逝徒會
死は
愛がどれ程深く、重く、切なく、苦しくとも、それは決して覆らない。
ここでいう彼が抱いた嫉妬とは、愛する者の心を死に略奪された大き過ぎる絶望なのだ。
――音楽ライター・
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奇妙な夜が明け、身に覚えの無い惨劇の痕が残された雨の山道。
突然脳内に語り掛けて来た声に対し、
「どういう……事だ?
『今はどうでも良いから、自分の置かれた状況を考えてみなさい。
声を聞いた
だが
曰く、人の精神は
ならば自分は昨日の夜から
「そう……だ。
そうでしょう、と
当然、彼女の表情は微動だにしない。
自問自答、そして被害者への問い掛けに、声は消え去ってしまった、かに思われた。
しかし暫しの間を置き、声は彼の予想もしない答えを返して来た。
『だったら自首すれば?』
「え?」
『そこまで思って、
都合の良い妄想だと思っていた
そんな彼の想いなど一顧だにする価値も無いと
『
嗚呼、
いつもいつも、昨晩だって彼女は自分の意思が絶対で
彼は恐る恐る声に尋ね返してみる。
「幻聴じゃないと、そう思って良いんですね?」
『
「じゃあ、良いですよ。解りましたよ。」
依然として、声は答えをくれない。ならばもう、一層の事そういう事にしてしまおう。これが狂気の産物ならば、最期まで身を委ねて狂い果ててしまおう。どうせこんな状況、正気で居られる筈が無いのだから。
「
『そう。だったら
☾☾☾
第一合宿所に戻った
『掃除しておきなさいと言ったでしょう。』
「
『じゃあ
「もう半年も一緒に居るんだから能力と仕事の兼ね合いを考えて欲しかったですけどね。」
今までの
『成程、そういう事なら
声がそう言うと、
そしてそれは、次第に
「うわあ!
『この姿を前にすれば、少しは元の
確かに、
そんな彼を見て、彼女は得意気な笑みを浮かべる。
『さて、時間的にもうすぐ昨日頼んでおいた朝食の出前が来るわ。
「うっ……‼」
彼女が
『思っていたより察しが良さそうね。答え合わせはすぐよ。多分、その後配達員は第二合宿所に向かうでしょうけれど、当然そこには受取人である筈の
そういう事なら、出前が来る前に目が覚めて戻って来られたのは幸運だったかもしれない。受取人が誰も居ないと配達員は不審に思い、
『勿論、すぐに動くのは駄目よ。
彼女曰く、
「その後は、どうするんですか?」
『まさか放っておく訳には行かないでしょう? すぐに職員室へ行き、宿直の先生に連絡しなさい。
「あの時?」
すぐに彼女も失言に気付いたのか、取り繕おうとする。
『何でも無いわ。今は忘れなさい。
彼女はそう告げると
☾☾
程無くして朝食の出前が配達されたので、
そして、少し時間を置いて職員室へ向かい、国語教師の
「わかったわかった。この件は
「え? 警察を呼ぶとか、事情聴取とか、そういうのがあるなら残った方が良いんじゃ……。」
「あったとしてもお前に話が行くのは長引いた時だけだ。すぐ見付かればそれでお終いだろうが。」
本当に内々で解決するつもりなんだ……。――
「全く……。
「
数学教師・
「まさか、あの人も?」
「おっと、つい口が滑った。まあ良い、誰にも言うなよ? 実は今日、
しかし、同僚は
『どうせこんなものよ。ここは
「わかりました……。では、
「無い事を祈るよ。色々と、な。」
そしてすぐに昼の出前のキャンセルを連絡した。
出前相手を知らなかった
その後、バスに乗って帰宅する迄は頭の中に声が聞こえてくることは無かった。
バスに揺られながら
☾☾☾
家に帰った
『やっぱりね……。』
自分の部屋のベッドに荷物を置き、椅子に坐って机に向かうと、沈黙を貫いていた声が再び彼に囁いた。
「何が『やっぱり』なんですか?」
そんな彼の前に、再び白い
『先に言っておくわね、
「どういう事ですか?」
『死体はもうあの場所には無いのよ。』
「誰かが動かしたという事ですか? ひょっとして連絡の付かない
『どうかしらね……。』
彼女はまたしても答えを逸らかした。
「あの、そろそろ教えてくれませんか?
いい加減にそれを話して貰わなければこれからどうすれば良いのか、訳が解らない。
『
「闇……?」
『そう。
彼女が言う、
「なってしまった、じゃないですよ。悪いけど
『そうね。
「
『
「ええ⁉ そんなこと言われても、
『心配は要らないわ。』
『どうせ明日には、
「
『無茶だと弱音を吐いている場合じゃないし、そんな事はこの
そう言うと彼女の
何事か、と思っていると
「な、何が……?」
『何って、
声は頭の中でいけしゃあしゃあと告げると、ノートにボールペンで文字を書いていく。
『良い?
『
再び文字が書き記されていく。今度は二文字だ。
『
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