第三話 禁じられた遊び
世に商人は即物的な金銭欲の権化にして、神仏を軽んじる者と
――豪商・
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季節は春。新学期の始まりから一月が過ぎ、新生活を始める上で精神的な一つの関門と呼ばれる大型連休の時期が訪れた。
「第一合宿所と第二合宿所……見るからに
高等部
第一合宿所は一見すると少し大きめな木造の納屋といった趣で、
「我が
しかし、
「あの細道が気になるかしら、
「え? ええ……。」
そんな
「我が
「
「よ、良かったって、何がですか?」
そんな彼女は彼の問いには答えず、平然と一枚の紙を役員達に配っていく。その用紙に答えは示されていた。そこに書かれていたのは中高
「な、何ですか……これ?」
「見ての通り、部屋割りよ。原則として男女別で、高等部と中等部の生徒をペアにしておいたの。先輩後輩の交流も兼ねてね。まあ中等部は男子三人女子一人だから先輩役の一人は中等部
「そういう事を
四人と四人、計八人の
そして
「何でって、第二合宿所に個室は四部屋しか無いからよ。それに先輩と後輩を混ぜたのは、後輩は先輩から助言を貰い先輩は後輩の意見を吸い上げ、互いの企画を煮詰める一助とする為、という目的もある。でも
「用があったら電話で呼ぶわ。どうせだから長年積もり積もった
「フン、良かったじゃないか無能。お前如きにも
「ま、
「あはは、
高等部
独り残された
☾☾
第一合宿所という名の
廊下の木目は毛羽立ち、一応部屋は畳張りだったものの井草の破片が歩けば歩く程剥がれ落ちる有様で、更には明らかに異臭がする。見るとそこら中に
昼食に用意した弁当も何だか
こんな場所、長居すると体に毒だ。
何故まるで嫌がらせのお
新築するなら創立前から残っていた古い建物ごと一新すればもっと大きな合宿所が造れたのではないか。――
と、その時彼の胸中にふと嫌な予感が滑り込んた。
この
そこには何か
そんな彼を驚かすように、これまた古い黒電話が喧しく鳴り響いた。
そう言えば、
「もしもし……。」
『
「す、すみません
『
「は、はあ……。夕食後、ですか……。そう言えばこの合宿、食事はどうするんです?」
『出前よ。今夜と、明日の朝、それからお昼の三食分予約済み。
『……御礼は?』
「あ、
『
「
『
「え? 例の細道ってあの、立ち入り禁止の?」
よりにもよって
「また、どうしてそんな事を?」
『
「大改善、改革、ですか……?」
『そう。
「確かに、それはそうですね。でも、だからってどうしようというんですか?」
『分からないの?
「問題の解決……ですか。まるで何か、問題がある事は判っている様な口振りですね。普通、まずは迷信を疑ってその嘘を暴こうとすると思うんですけど……。」
「あの、何か変な事言いました?」
『変、ねえ……。
違和感、そう言われても直ぐにはピンと来なかった。
唯、何か恐ろしく不穏な気配は感じる。
何か今、起きてはいけない何かが起きているような……。
『今の状況を成立させる為には、その建物の周りに無くてはならない物が在る筈よね?
無くてはならない物、そう言われて
と、そう考えて彼はぞっとする事に気が付いた。そして直ぐに、もう一つの違和感に気が付く。
「あの、
『何かしら?』
「この電話、昔の黒電話……ですよね?」
『そうよ、ダイヤル式の。使い方は御存じ?』
「いや、そういう問題ではなくてですね……。これ、何も線が繋がってないんですけど……。」
『……その通りよ。やっと解ったみたいね。』
そう、この第一合宿所の周りには一切の電話線が引かれていない。更に、黒電話自体、電話線が無い。
当然、そんな状態で通話出来る筈が無いのだ。
電話の向こうの彼女は再び小さな笑い声を漏らし、そして電話越しにまるで怪談話を始めるような趣で語り始めた。
『この山はね、
「異界……? どうしてそんな……。」
『さあ?
「ま、まさか
『今宵
「な、何言ってるんですか⁉」
『
彼女の突拍子も無い思い付きは、
しかし、この
『
「うぅ、はい……。」
『では九時に立て看板の前で待っているわよ。』
「分かりました……。
しかしこの後、彼等に惨劇が降り掛かる事となる。
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