勇者パーティの料理番!

しきしま

第1話

「リージュ、君には勇者パーティを抜けてもらう」

「どうしてだ!? 俺たちずっと一緒に頑張ってきたじゃないか! 理由を説明してくれ!」

「理由か……」


 宿屋の一室。備え付けのテーブルに俺と向かい合わせに座った男――このパーティのリーダーである勇者は腕を組み、そして静かに口を開いた。


「知っての通りこのパーティには後衛が多い。今までは火力でゴリ押してきたが最近それだけじゃ通用しなくなってきたから弓使いの君の代わりに前衛を雇いたいんだ。後釜には戦闘力のバランスを考えて戦士か侍を入れようと思う」


「至極真っ当な理由じゃねーか……」


「もちろん君を残して新しい人も雇えたらそれがベストなんだけど資金繰りが厳しくて。正直レニア(魔法使い)とどっちを解雇するべきか迷ったんだけど、物理攻撃耐性のある魔物への対策として魔法使いは残したいなと思った」


「冷静かつ真剣に考えてもらった上でレニアに負けてるじゃねーか……」


「加えて君は給料の前借りが多く、また街の酒場で他の冒険者と喧嘩をするなどの軽い問題行動を起こすことがある。君を雇用する上でのコストパフォーマンス、素行の良し悪し、そして最初に述べたパーティ構成の問題などを総合的に判断した結果、今回の結論に至った」


「正論すぎて一ミリも反論できないじゃねーか……」


「急な話だし一般的に会社都合での退職には三か月の告知期間が必要だから、それまでは居ていいよ。もちろん次のパーティが早めに決まったらそのタイミングで抜けてもらっても構わない」


「会社?? 法令順守意識も高いじゃねーか……」


「君の能力が低いとか人間性に問題があるとかではなく、ただ弊社の求める人材にはミスマッチだったというだけの話だから、自分がダメだとか決して思わないで下さいね。あなたのスキルを必要とするパーティは必ずあります。新天地でのご活躍をお祈り申し上げます」


「弊社って何!?」


 俺は勢いよくテーブルの上に頭を打ちつけた。ゴッ!と大きな音が鳴り、同時に少しだけ涙が飛び出た。勇者たちの仲間になって早一年。自分なりに精いっぱい駆け抜けてきたつもりだったのだ。


「まさか勇者パーティをリストラされるなんて……皆と一緒に魔王討伐に命を賭ける覚悟でいたのに……」

「すまないな、心苦しくは思っているんだ。資金が足りないのは単純に僕の管理能力不足でもあるから」


 心底申し訳なさそうなその声色に、俺は思わず顔を上げた。


「そんなに金が無かったのか?」

「装備代、ポーションなんかの消費アイテム代、それに少ないけれど皆の月給を払ったら後はほとんど残らないね」

「そこはケチれないもんなぁ」

「あと、食費もだね」

「ん? 食費……」


 俺たちは毎日3000G(ゴールド)ばかりの食費をもらっていて、思い思い好きなものを買って食べている。旅を始めた当初は安い食堂に行って皆で食事をとっていたのだが、それぞれ食の好みが違いすぎていつしかバラバラに外食するようになった。

 ちなみに本日の俺の朝食は朝市の屋台で買った肉入り卵雑炊(500G)だ。行列ができていたので地元民の名物なのだと思う。食欲をそそるごま油の香りに、スパイスをきかせた独特の味付けがかなり美味かった。


「それだ! 食費のお小遣い制をやめよう。そもそも一日一人あたり3000Gってのが多すぎるんだ。これを一人あたり1000Gに減らせばいい」

「え?」


 興奮気味に机を叩いた俺とは対照的に、勇者は戸惑った顔をした。


「いや、それはあまりに非現実的な計画というか……無理じゃないか?」

「なんで? 予算を決めて皆で一緒に食べればいいだろ」

「そうしても、結局皆で外食することになるんだから使う金額は変わらなくないか」

「違うって。自分たちで作って食べるんだよ」

「ジブンタチデ……ツクル……?」


 何で片言? 勇者は人間と初邂逅した時のオーク族のような反応をした。


「それは、つまり……料理をするということか?」

「あ、ああ、そうだが」

「誰が?」

「だから皆で……」

「出来ると思うか? 俺と、レニアと、ミオリスが」

「……出来ないのか?」


 俺以外のパーティの面々は三人とも結構な上流階級の出身だが、それでも一度も料理の経験がないなんて事があり得るのだろうか。使用人もなしに一年以上旅をしているというのに。

目の前の男は深くため息をついた。そしてもう一度息を吸い、堂々たる表情で俺を見据えた。


「まっっっっっっっったく出来ない‼」

「威張ることか⁉」

「だいたいリージュ、君も外食してたろ?」

「まぁ基本は。だが、俺は市場で食材を買って調理して食べることも多いぞ」

「え!? そうだったの!?」


 勇者が目を丸くした。一年も一緒に旅しているというのに俺はこの男が驚いているところを初めて見た。

 これはもう決まりだろう。俺がパーティに残るためには、ここを攻めるしかない。


「分かった……『弓使い』リージュは解雇を受け入れる。ただし!」


 ガタンと椅子を倒して立ち上がった。能力が足りないのならば、パーティに需要がないのならば追放は仕方のないことだ。しかし。


「俺を……『料理人』リージュを再雇用しろ!!」


 彼らにとって己がまだ“必要”だと、他でもない自分自身が感じるのならば。形はどうあれ何としてでもこの場所にしがみつかなければならない。俺は自らの胸をドンと叩き、訴えた。


「俺がこのパーティの料理番になる!」





「あ、出てきた」


 宿の外では残りのメンバーたちが待っていた。勇者から「リージュと話があるから二人は待っててくれ」と言われて先に外に出ていたのだが、どうやら俺の解雇の話はあらかじめ共有されていたらしい。

 亜麻色の髪の僧侶、ミオリスがすっかりお通夜ムードの様相で話しかけてきた。


「リージュくん、ごめんね……。私がもっと要領よかったらこんなことにならなかったのに」


 碧い髪の魔法使い、レニアは対照的に勝ち誇った表情だ。


「悪いわね。私のほうが有能だったばかりにこんなことになってしまって」

「今まで楽しかったね。一緒に色んな所に行ったよね。四人でおんなじ景色を見たよね」

「でも、勘違いしないで。あんたが追放されるのは結局あんたが無能だからよ!」

「最後だから言うね。私、本当はリージュくんのこと……ずっと好きだったの」

「お荷物はお荷物らしく自分のレベルにあったパーティで雑魚と慣れ合ってなさい!」


 もう二人とも完全にお別れ気分になっている。違う内容を同時にしゃべるのはやめてほしい。

 俺はぽりぽりと頬をかいた。


「あー、その、言いにくいんだが。俺はクビになってないぞ」

「えっ?」


 きょとんとする女子二人。

 俺と勇者は状況を一から説明した。





「そっか、リージュくん、再雇用されたんだ……!」

「いやいや、再雇用って何よ」


 頬を染めて喜んでくれるミオリスに、レニアの突っ込みが入る。


「ちょっと勇者、情でも移っちゃったわけ? 役立たずをクビにするって話だったでしょ?」

「そういう話ではなかったね」


 勇者が首を振った。レニアの中ではそういう話だったようだ。

俺の胸よりちょっと下あたりから、大きな瞳がじっとりと睨み上げてくる。


「あんた料理なんてできるの?」 

「意外か? 器用さには自信があるんだが」

「弓使いだもんね」


 ミオリスがうんうんと頷く。レニアはせせら笑った。


「そうね、器用貧乏って感じよね」

「……」


 俺は目を閉じて無の表情をした。いつもなら言い返して大喧嘩になるところだが、今の俺はいわば試用期間。心象を損ねるような発言はしたくない。

見かねた勇者が割って入ってきた。


「レニア。リージュの話を信じるならば、僕たちのパーティはこれから大幅に食費を削れるらしい。まずはその根拠を見せてもらおう」

「えー……高級レストランのコックでもないのにおいしい料理が作れるわけ? しかも、予算もないってことでしょ?」

「リージュ曰く一人あたり一食300Gで料理を作るそうだ」

「は⁉⁉」


 レニアが目を剝いた。まあ、貴族出身の元お嬢様にとってはとても信じられない額なのかもしれないな……。


「そ、そんな安い値段でまともな料理が本当に作れると思ってるわけ? そのへんのレストランだって一食1000G前後はするわよ。それだって庶民の味だなーって感じで食べてるのに」

「……」

「残飯とか使わないわよね?」

「んなわけねーだろ‼ アホか‼」


 結局我慢できずに言い返してしまった。大人げなく取っ組み合いの大喧嘩になり、顔をめちゃめちゃひっかかれた。

 それぞれ勇者とミオリスに羽交い絞めにされて引き離され、少し冷静になった俺はこほんと咳をした。


「まあ、とにかくだ。とりあえず今日の昼飯を作ってみせるから、それを食べて判断してくれ」

「まずかったらクビだからね!」

「分かってるっつの!」


 歯を剝いて言い返すと、ミオリスと目が合った。にっこりと微笑まれる。


「再就職のお祝いしなきゃねっ」


いらんだろそれは。……今はまだ。





本日の予算:1人300G


手持ちの食材:薬草、米(リージュの私物)、調味料(リージュの私物)



 宿の台所を借りた俺は、市場で買ってきた食材をどさどさと置いた。

 目を閉じ、深く深呼吸をする。今から提供する料理が俺の今後の進退を決定づけるのだ。半端なものは作れない。確実に攻めたい。

 とすれば、やはりここは万人受けするメニューでいくべきだろう。嫌いな人が少なく、皆が等しく好むものを。

 このパーティの誰しもが好きなもの……そう、それは。


「全体攻撃だ‼」


 俺は拳を振り上げた。

 全体攻撃が嫌いなやつはいない。勇者の回転斬りもレニアのファイアラウンドも俺の五月雨撃ちも、習得したときには皆が大喜びしたしお祝いもした。だって一度の攻撃で敵全体にダメージを与えられるんだぞ。こんなお得なことがあるか? 一瞬で雑魚が消し飛んで戦闘が終わるから傷だって負わない。「ちょっと攻撃力が下がるから強敵との戦いではあんまり~。やっぱり強力な単体攻撃を極めるのが玄人だよね~」とか言ってるやつ。黙ってろ。ボス戦で取り巻きの雑魚がいっぱい出てきたらどうするんだ。一体一体倒すのか⁉ ボス戦の取り巻きの雑魚だぞ通常攻撃で一撃確殺できるわけないだろそれともお前はその超強力スキルを使うのか無駄に高い消費MPを使って⁉⁉ ……そうか、納得できたら黙ってろ。

 そしてもうひとつ。老若男女全職種全人類が好きなもの……そう、それは。


「カレーだ‼」


 俺は再び拳を振り上げた。

 まさにキングオブ万人受け。みんなが大好き料理ランキング上位の常連。いかに食の好みがバラバラなパーティであろうと嫌いというやつはそういないだろう。多分。

方向性は決まった。さあ、調理開始だ。

 米は俺が自炊用に常備しているものを使う。重くなるからいつもそんなに持ち歩いているわけではないが四人分くらいはあるだろう。調味料についても同様だ。あとは市場でカレースパイス、にんじん、たまねぎ等の野菜類、そしてひき肉を買ってきた。

 米は研ぎ、鍋に入れてしばらく水に浸してから火にかける。買ってきた野菜を切り、もう一つの鍋の底に油を引いて軽く炒めていく。ちなみに俺はにんじんの皮は剝かない派だ。面倒くさいから。

 そこでふと思い出し、懐から薬草の束を取り出した。料理にとりかかる前、ミオリスがやってきて「これを」と手渡してきたのがこの薬草だ。その時のやり取りを思い出す。


『え、なに?』

『荷物の中に食材になりそうなものがないか探してみたんだけど、これしかなかったの』

『あー……ありがとう。でも薬草って料理に使ったことないな』

『使えない……かな……? ごめんね、リージュくんの力になりたかったんだけど本当に私が役立たずのポンコツクソムシゴミ野郎で、本当にごめんね』

『いや、そこまで自分を卑下することないからな⁉』


 ……というわけで、この薬草も料理に加えることになったのだ。

 薬草――それは便利な回復アイテムの一つ。生食オッケー。俺は戦闘中にむしゃむしゃ貪り食う。何でも体内の代謝をぐーんと上げて傷の治りを早くする……という仕組みらしい。ちなみに、すりおろして直接患部に当てても可だ。

 正直、戦闘で使わずにHP満タンの状態の今食べてしまうのは勿体ない気もするが、せっかくのミオリスの好意だ。それに予算が限られている中、タダで使える食材(?)が手に入ったのは素直に感謝すべきだろう。


 食材としての使い方はよくわからないが、まずはざっくりと切る。ほかの野菜と同じタイミングで煮込むとすぐに溶けてしまいそうなので、ひとまず放置。

 それから鍋に水を入れて、にんじん、たまねぎを煮込んでいく。ひき肉は味付けしてからよくこねて、手で小さな球体を何個も成型し、ぐつぐつとゆだる鍋の中に投入。固まってきたら薬草も投入だ。煮込んだ薬草はくたくたに柔らかくなった。深緑がより鮮やかさを増し、まるで青菜のように見える。

 それからカレースパイスを加え、調味料で味を調え、お米にたっぷりとかけたならば――


「『全体攻撃カレー』の完成だ!」


 なみなみとカレーの盛られた皿をとん、とん、とん、とテーブルに置いていくと、立ち上る湯気と良い香りに三人が目を輝かせた。


「これは……美味そうだな」

「リージュくんすごーい!」

「い、意外とまともな見た目じゃない」


 ふっくらと炊き上がった米にかけられたカレーは見るからに具沢山で、真昼の光をつややかに照り返している。自分で言うのもなんだがよく出来たほうだと思う。


「さあ皆、冷めないうちに食べてくれ」

「ああ、そうだな」

「うんっ」

「てか、何よ『全体攻撃カレー』って」


それは俺もそう思う。しかしながら、まずは一度食べてみてほしいのだ。


「レニア、俺は今日は口では語らん。料理で語るぞ」

「何言ってるかさっぱりわかんないんですけど」

「いいから食え‼」

「もががー‼」


 俺は目にも止まらぬ速さでスプーンをつかむと、カレーをレニアの口に突っ込んだ。無理やり食わされたレニアは最初身体をばたつかせて抵抗の意を示していたが、もぐもぐと咀嚼はしてくれていたようだ。

 もぐもぐ……ごくん。その瞬間、レニアの眼がカッ!と開いた。


「これは……ミートボール⁉」

「その通り。少し意外だろ?」


 レニアは俺の言葉には答えなかった。その代わりスプーンを次々と自分の口元へ運んでいく。野菜と米をすくって食べ、米だけをすくって食べ、ミートボールをすくって食べ、そしてまた野菜と米をすくって食べる。黄金ループへの突入だ。


「にんじんは大きめに切ってあるからジューシーな味わいを感じられて良いわね。このほうれん草みたいな青い野菜は何かしら? 全体の肉肉しさを打ち消すことで、食べやすくヘルシーな風味になっている。良い仕事をしているわ」

「レニアちゃん食レポ上手~!」

「そして何よりもこのミートボール! 安い肉なのよねこれ? そうは思えないほど美味しいわ……。だいたいミートボールとカレーの組み合わせなんて美味しくならないわけがないじゃない‼」

「美味しいもの×美味しいものだもんね!」

「お、おお……」


 想定外の絶賛に思わず口ごもってしまった。正直ちょっと照れている。


「そんなに美味いのか?」


 レニアの不意打ち食レポを聞いた勇者とミオリスもカレーを食べ始める。ほかほか湯気のたつカレーをふうふうと冷まし、ぱくんと口に含む。もぐもぐと噛んだ後、二人の表情がぱっと明るくなった。


「……んん、これは美味いな! ミートボールにかぶりつくとじわっと肉汁があふれてくる。たくさんの野菜の間に、これが宝石のようにあちこちに散りばめられているだなんて」

「まさに全体攻撃なカレーだね!」

「まあ呼び方を変えるとすれば『ミートボールカレー(薬草入り)』だな」


 俺はいくらかほっとしながら言った。皆の反応が想像よりも良くて安心したのだ。三人とも一心不乱に集中してもりもりと食べてくれている。これは……もしかすると、もしかするのではないだろうか。


 食後の満足感が漂い始めたところで、俺はこほんと一つ咳をした。


「さて、皆。そろそろ判定を聞かせてもらおうか。俺はこのパーティに残ってもいいかな?」


 まったりとした空気の中にぴりりとわずかな緊張感が走った……ような気がした。わからない。俺の心がそう思わせたのかもしれない。


「私は賛成だよ」


 最初に口火を切ったのはミオリスだった。


「このカレー、すっごくおいしかった!それにHPも回復したし」


 そりゃどう考えても薬草のおかげだろうな。


「僕も異論はないかな」


 次に口を開いたのは勇者だ。


「300G前後でこのクオリティのものが作れるなら食費の大幅な節約が見込める。もう一人分くらいの給料も何とか捻出できそうだね」


 よし、過半数の票を獲得したぞ。まあ三人しか居ないうちの過半数なわけだが。

 そしてもう一人、最難関の人物が残っている。そいつはいかにもぐぬぬぬという感じの表情で今もこちらをにらみつけている。


 俺は内心ほくそ笑んだ。レニアよ……お前が肉に目がないのは知っている。そしてカレーやラーメンやハンバーグのような味が濃く分かりやすい、ザ定番!といった感じの料理が大大大好きなのも知っている。いわゆる子供舌というやつだ。

 今回の料理は『万人受け』『スタンダード』を狙ったが、それはレニアの趣味に寄せたともいえる。なんだかんだ俺に甘い勇者やミオリスに比べて、こいつの評価を得るのが一番難しいと踏んだからだ。


 ぐぬぐぬ悔しそうにしていたレニアだが、ついに白旗をあげた。


「く……! 悔しいけど、認めざるを得ないわね」

「そうか、ありがとな!」

「勘違いしないでよね! 別にあんたのためじゃないんだから! 私が毎日色んな料理を楽しむためにあんたをパーティに残してあげるんだから、つまり私のためなんだからね!」


 教科書丸写しのようなツンデレを発揮するレニアを尻目に、勇者がザッと前に立ちはだかった。


「それで……晩ご飯は何だい?」

「おじいちゃん、今しがたお昼ご飯食べたばかりでしょ」


 つい突っ込んでしまった。真顔でボケる勇者の身体をレニアの細い腕が押しのけた。


「この私の胃袋を掴んだ責任、取りなさいよ!」

「善処する」


 偉そうに仁王立ちするレニアにはとりあえず肯定を返すしかない。満足そうにフスン!と鼻を鳴らすレニアの後ろから、ミオリスがひょこっと顔をのぞかせた。


「リージュくん、これからもよろしくね。もう離れないからね。ずっと一緒だからね」

「……ああ、よろしく」


 何はともあれ、今日から俺の新生活が始まりそうだ。勇者パーティの料理番。この肩書がこれからの人生に及ぼす影響がどんなものになるのかまだ知る由もなかったが、新たな人々との出会い、そして新たな料理との出会いに胸を高鳴らせながら、俺の新しい旅は幕を開けたのだった。



おわり

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