ほっといてよ
お題 悔しい感覚
「はぁ。はぁ。あーーーきっつ」
私は少し屈みながら両手を膝につく。体中から汗が噴き出して、ユニフォームの後ろが汗でベタベタで気持ち悪い。息はまだ整わない。周りの歓声が鬱陶しい。
しばらく深呼吸しているとだんだん息が整ってきた。
「お疲れ桜。良い走りだったね。……ほんとにお疲れ様。みんなあっちで待ってるから、早くおいでね」
同じ部員の友梨佳が声を掛けてくる。友梨佳が行ったほうが騒がしい。当然だ。あいつが優勝したんだもん。
私は四位。
あれだけ練習したのに。あれだけ辛い思いしたのに。あれだけ我慢したのに。あいつだ。最後には全部もってっちゃうんだ。全部、全部。
私はやり切った。ベストを尽くした。限界まで追い込んだはず。
でも負けた。
歓声が止んできた。私は水筒を持って人気のないところに座り込む。
私はやりきって多少の達成感はある。でも心地よくはない。だって悔しさのほうが勝るんだもん。素直にあいつの優勝を祝えない私のこの性格も嫌だ。
だって祝えるわけないじゃん。私負けたんだもん。あんなに練習もしたのに。そりゃあいつも練習しただろうけど。だけど。
汗はだんだん渇いてきて、今度は鼻頭が熱くなって喉も少し締まって涙が出てくる。
なんでよ。最後なのに最後なのに。
涙は両目からあふれて止まる気配はない。
不意に背中を擦られた。
「よかったよ。君の走りも」
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