伝統の車

お題 メジャーな車


「これって昔の車?」

「そうだよ。だいたい340年前くらいによく走ってた車」

 僕は見たこともない車のような物体を指さしてお父さんに何かと尋ねる。

 あんまり良いセンスとは言えない配色に不気味な形。今その辺に走ってるっていうか飛んでる感じの車とは少し違う。

「なんでこんな車持ってるの?」

「これはね。昔メジャーだった車なんだ。でもどんどん時代が流れるにつれてこういう車は廃れていくんだ。それを僕の先祖は良く思わなかったんだろうね。だから先祖は何故かこの340年前のこの車から車を集めていたんだ。それを代々継いでるって感じ。お前もいずれ継ぐんだぞ」

「えーーーーーー。めんどくさいなぁ。継いでどうするんだよこんなの」

 僕は単純にめんどくさいと思った。こんなガラクタ、ウチにあっても困るだけだろ。家のスペース食うだけだし。

 っていうかどうしてだろう。こんなの340年もとっておくなんて意味があるはずだ。しかもよく見ると保存状態も完璧だ。傷も凹みも全く見られない。340年もの長い歳月、よくここまで完璧に保存したなぁと感激した。ただの伝統という理由だけでここまで大事にする先祖もすごいよなぁ。

「でもな。ただの伝統ってわけでもないんだ。これ。30億円するんだ」

「は?」

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