第2話:お金と食材、両取りしたくないですか?

 翌朝、レンとライトは目ぼしいクエストを見つけに街のギルドへ向かった。掲示板の前に立って依頼を読み込んでいく。

「もしかして、来るの早すぎた?」

レンはまばらな掲示物を見ながら苦笑いする。

「んふふー」

ライトは曖昧に相槌を打つ。


 肉が食べたいあまりに、依頼が出揃うよりも随分早く掲示板に陣とってしまったようだ。これではしばらく手持無沙汰である。

「うーん。ぼーっとしてると余計腹減ってくるなぁ」

何もすることがなくて、腹持ちが無駄に気になってはむなしくなってくる。早く新規のクエストが張り出されないだろうか。

意気消沈している二人に割り込むように、

「あ! レンー! ライトー!」

遠くのほうから、二人を呼ぶ声がした。

「シャノンー」

ライトが振り返って、満面の笑みで大きく手を振る。手を振り返しながら二人に向かって駆けてくる少女の名前は、シャノン。街の食堂でウェイトレスをしている。

「珍しいな。……もしかして、食材系のクエストの依頼か?」

シャノンの手元の書類を見ながら、レンが尋ねる。

「そうそう!  急にマッドピッグの肉が手に入ってね! マッドカウの肉が手に入れば、マッドシリーズの美味しい合いびき肉ができるんだって。だから依頼しにきた! 」

シャノンの勤め先の食堂は、リュウジの店である。昨日から二人がとても行きたがっている店だ。

「まじかー! それ、専任依頼してくれない!? 」

「リュウジ兄ちゃんの美味しいご飯食べたーい! マッドシリーズの合いびき肉で、すんごい料理が食べたーい! 」

いつも二人が揃えばにぎやかだけれど。今日はやけにテンションが高い。シャノンは訝しげに尋ねる。

「……なんでそんな、必死なの」

待ってましたとばかりにレンが言う。

「昨日めっちゃ疲れることしたのに、肉が食べられなかったんだよ!」

「切なくなっちゃうよねー」

しょんぼりしながらライトが追い打ちをかける。

「すんごい肉が食べたい気分だから、肉が取れるクエスト最優先で取り組みたい!」

「お肉にわくわくしちゃうよねー。専任出たら、頑張っちゃうよねー」

二人のやり取りをひとしきり見守った後、シャノンは軽くため息をついた。

「……まぁうちは、食材取れれば何でも良いんだよ。じゃあ専任で出しとくね。一両日中に納品してほしいなー」

「「シャノンさま!!」」

二人の顔がぱっと華やぐ。シャノンは笑ってギルトの受付へ向かった。

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