8話 ラバウル帝国の悪魔ハンター、下見に来る。
ベルディモード…つい、最近出来た街だと聞いている。
100人にも及ぶ悪魔ハンターたちが消えた。
ここには何かある。
街の東にある森に隠れ、オレは山羊の頭をした悪魔を召喚する。
「デル。お前の出番だよ…。きっとスゲー秘密があるに違いないぜ」
「何だ?贄(にえ)はあるのか。」と、デルは機嫌が悪そうだ。
「へっへ。街の住人を好きに食べていいぜ。それじゃあ、ダメか。」
「ダウン。それは贄とは言わん。」
「へっへ。だが、この街の住人は悪魔にとってとても美味いと評判だ。酒場で聞いて来たんだ。間違いねぇ。言ってはいけない言葉も聞いてきたしな。へっへ。とにかく食べ放題って奴よ」と、ダウンというのがオレの名前だ。こう見えても金髪で左目は召喚士になる時に失ってねぇ。今は右目だけだ。皮のベストを着て、ちょっとした観光客を演じてオレは街に入る。完璧だ。
「……。たしかに食べ放題だな」と、デルはニタリと笑う。いや、笑ったように見える。「先に行く」と、デルは影に潜って行っちまった。影移動。闇魔法って奴かねぇ。便利なこって。
「さーて、オレはゆっくり行かせてもらうかね」
門番はいなかった。脳裏に声が響く。
<悪魔を歓迎する>
「ば、オレは悪魔なんかじゃ」
え?
心が悲鳴をあげる。
誰だ?誰の声だ?
召喚士にとってこれは致命的だ。
オレの魂では本来召喚できない上位の悪魔がいる。
この街には……。
「ひひ。ひひひ、ひへぁ」オレは腰を抜かしてしまった。
どうする?どうする?
デルを呼び戻して今すぐ帰るか。まだ何の宝も宝石も金も手に入れてねぇのに。
そんなバカな。
「へへ。そうだよ。こんなところで逃げてたまるかよ」
オレは何とか立ち上がり、歩き出した。
目が赤く光っているな。歩いている奴ら。
それに楽しそうだ。
デルの奴、ちゃんと食えたのか。
「戻ったぞ」と、デルの声だ。
「おう、戻ったか、デル」と、オレは声がした左側を見る。
「たしかに美味であった」と、デルは言う。
「…………」
「なんだ???どうした、主よ」
「いや、お前…顔?」
「おお、顔が人型へ変化したのだ。全く持って驚いた。その上、美味であったわ」
おいおい、それだけじゃねぇ。
服なんて着てなかっただろ、お前。執事の服なんて。
オレの魂で人型とかありえねぇ。
いや、待て。じゃあ、さっきの声はデルの声だったのか。
デルが贄を食べて…上位の悪魔に。
いや、デルはデルだ。
贄(にえ)で動く。契約どおり。
契約してねぇ悪魔がいる。そう、この街に。
「おい、デル。他の悪魔は見かけなかったか」
「われと同じような悪魔か?いや、いなかったな」
「そ、そんなはずはねぇ。いるはずだ。いるはずだ。探してこい」
「いや、くまなく探したぞ。そんな奴はいなかった」
<リティアを探してるの?>また脳裏に声が響く。
いるじゃねぇか。その名前じゃねぇ。その名前は言っちゃダメな方だ。
街の住人が真の名前を知っているはずだ。
街の住人と話さねぇと。
「デル。報告はもういい。あそこで歩いている奴を捕まえてこい」
「よかろう。贄として喰ってよいな」
「好きにしろ」
デルは片腕を食べて、持ってきた。
165センチぐらいの男だ。
食べられた腕を押さえつつも痛いとは言わねぇ。
何だこいつ。
え?腕が。
腕が回復した。
「おい、お前」
「サベルだ。お前ではない」
「ちっ。サベル…この街の神の名前を教えやがれ」
「答える義務はない」
「おい、デル。腕をもう一回食べろ」
男はまた痛いとすら言わない。
らちが……。
「……」デルは下をまっすぐ見て、跪いている。
オレは正面から歩いて来ている少女に目が離せねぇ。
腰まである長い黒髪、赤い真紅の目、白い肌、紫の司教の法衣。
<いただきます>脳裏に声が響く。
デルは腕を黒い狼に喰われた。
両腕とも。
オレは逃げた。
走れ、走れ。
門だ。
きっと門さえ越えれば。
きっと、助かる。
助かるはずだ。
黒い門?
「ひぃ」
デルはじっと下を見ている。
身体を喰われ、デルの首は転がる。
何かにぶつかり、デルの首は止まる。
ダウンの首だった。
気配を下から感じる。
地面から2つの首は消えた。
黒い大きな狼の口は地面の中へ沈んでいく。
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