7話 われの名はベリアル。

ベルディモードと呼ばれる街に来た。


われは大悪魔の1人。北のラバウル帝国から逃げてきた。


100人の部隊による悪魔ハンターたち。危うく命を狩られるところだった。仲間のウワサを頼りにベルディモードに訪れた。


ここの住人は2本の角があるわれを恐れない。服装こそ人間たちと同じ服装だが、目は赤色に光っているし、あふれでるオーラは禍々しい黒だと言うのに。


誰もわれを恐れない。

まるで当たり前のように接してくる。挙句の果てに、宿屋まで紹介された。


だが、あいつらはここに必ずやってくる。

必ず。


ラバウル帝国の悪魔ハンターたちは街に入る直前で躊躇していた。


「なあ、この街って……。手紙に書いてあった街だ。バディさんが教えてくれた街だ。オレは帰るぞ」と、1人、また1人と部隊から離脱者が出る。


離脱した者たちは黒い何かに喰われた。


「え?」

足を止める。誰も動かなくなる。

そして自分たちはすでに選択肢は無いという事に気づいて行く。


90人…彼・彼女たちは仕方なく、ベルディモードへ訪れた。


ベルディモードの宿屋にて。


われは不思議な気分を味わっていた。我が君。唯一の魔王にして、王の中の王。

ここはどういうわけか、我が君。最後の御方がおられるのかもしれない。

傷はだいぶ癒された。われは散歩をする事にした。


湖でも見に行ってみようと、入ってきた門の方へ歩いて行く。

するとぞろぞろと悪魔ハンターたちが歩いてきていた。

「散開」と、奴らの掛け声を聴く。


あっという間に囲まれてしまった。

放たれるは、2属性魔法、3属性魔法とわれの弱点となる属性をちゃんと選んでいる。抜かりない。避ける手段も無く、われは直撃を覚悟する。

最後の御方…その気配を感じるこの場所でなら。

だが、待てども待てども魔法の直撃は来なかった。

われはそっと目を開けてみる。


黒く長い髪、赤い目、真紅とも言える綺麗さ。白い肌。紫の司教の法衣を着た少女。

いや、人型。限りなく人に近い。いや、ほとんど見分けはつかない。

最後の御方様。

われは跪いて頭を下げた。


悪魔ハンターたちの魔法は最後の御方様によって、消滅させられたのだろう。

「オリハルコン、神の剣に斬れるもの無し」と、何人かの剣士が斬りこんできた。

われはあきれる。

われのような下級悪魔には致命傷を与えることもできる武器だが…。

最後の御方様はすべての主。物質創造の王。根源そのもの。

まるで分かっていない。

あらゆる存在の最後を看取る御方様なのだから。

おそらく避けるという動作すらされない。そう思っていたら、時を止めて避けておられた。いや、遊んでおられるのだろう。

正確には時を遅らせているだけ。

止めてはいない。

よく見れば、相手方の魔導士に時の呪文を詠唱している者たちがいる。

術式からして、停止を望んでいるのだろう。

われ相手ならば、十分だ。われを滅ぼすのなら。


結果は見えているが、見届けてやろう。


「時の魔術、発動!!!」と、魔導士たちが叫ぶ。

オリハルコンの剣を持った者たちが最後の御方様に、そしてわれに斬撃をふるう。

われは容赦なく滅びた。首だけになっても?おや?

これは御方様の分身と呼べる冥府の大蜘蛛様。

今、その視点から見ているようだ。


最後の御方様は平気な顔をしてかわしておられる。

剣士たちが後ろへ飛びのき、魔導士たちは頭を押さえている。

ああ、最後の御方様が時を止められた。

動けていた者たちが動けなくなる。


やはり遊んでおられる。

首を狩りとる瞬間に時間を動かし、断末魔をわざわざあげさせる。


おや、時間を解除し、魔力で縛られたか。


黒い蜘蛛が噴き出る。

まるで火山の噴火のように。

大勢いた悪魔ハンターたちは全員消えた。

「ありがたき幸せ」と、われはつぶやく。

いつの間にか身体を再生されていた。

「また歯ごたえのあるエサを連れてきなさいな」


「おおせのままに」われはそう答え、再び帝国へ舞い戻った。


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