5話 悪魔ハンターに誘われて。

悪魔ハンターバディはボクの古い知り合いになる。

悪魔ハンターと名乗る彼女は装備に恵まれていたのか、とても強かった。

ボクは人型の府と、陰陽術を使い、妖魔を倒す者。

陰陽師という奴だ。

自分の国では百鬼夜行、鬼神、最強の陰陽師として名をはせた。


妖魔を倒すのに飽きているならと、バディから手紙が来た。

とんでもない悪魔(妖魔)がいるから倒しに来る?来るなら旅費を送るよ。


そんな短い文章だった。

まさか来るとは思わなかったのだろう。行くと、返事をすると驚いた手紙が来た。

止めた方がいいよ。忠告。同じ倒す者として忠告。きゃ、手が崩れるからこれ以上は書けないの。でも、もしも来てくれるなら私たちの仲間になって。


ボクはもう一度行くと、返事した。

お金が送られてきた。そのお金を使って、今ボクはラドラスティア王国に来ている。

ベルディモードと呼ばれる気味の悪い街に宿を取り、そこから南下した。

バディだ。銀色の髪は美しい。あれ、目が赤く光っている。あんな目だったかな。

「やあ、バディ。」

「久我まさとし。来てしまったのね。」と、バディは言う。

ボクは出会った時と同じおかっぱ頭だ。髪の色は黒い。身長はバディよりも1センチほど小さいぐらい。バディは何だか暗い顔をしている。

「何だよ、暗い顔をして」

「ごめんね、まさとし。もしも倒せたら……私を解放して。あと兄さんも。」

「おいおい、それって。君たちほどの悪魔ハンターが下僕になってしまったのかい」

「そうなの。逆らえないの。」

「じゃあ、ボクは君たちとも?」

「それは大丈夫。あいつは1対1で戦ってくれるわ」

「そっか。それなら…。それでとんでもない妖魔はどこに?」

<こんばんは。いい風が吹くわねぇ>


脳裏に声が響く。

気持ちが吹っ飛んだ。

こいつはヤバい。

呪い、呪力を感じる。


魔神に出会ってしまったかのようだ。

気配で分かる。

左だ。

木火土。(もくかど)ボクの最大出力。三属性をつなげる大技だ。

土の蛇よ。

土の蛇は間違い無く、対象を喰らった。


何だ?あっけないじゃないか。


ボクは土の盛り上がった左側へ歩いて行く。

後ろ側にトンっと何かが着地する音を聴く。


黒い表紙、白紙の中身の魔導書。

黒い髪、目が無い。

それに黒いローブ。


拒絶の悪魔…呪い其の物…師匠が言っていた呪い其の物にはどんな呪いも意味をなさないと。


え?どういう事?

何でそんな化物なの?


「三属性をつなげたぐらいで…周囲からちやほやされて見失ったの?自分を」


「違う。」と、ボクは叫ぶ。


「木火土金水木火土(もくかどごんすいもくかど)。」拒絶の悪魔は8属性をつなげてきた。

土蛇では無く、土龍だ。


ボクの50センチほど隣の地面から土龍が天へ上る。

わざと外したのだろうか。


拒絶の悪魔は黒い蜘蛛に姿を変える。

え?

師匠が大鬼と戦った時に命と引換に召喚した冥府の大蜘蛛。

赤い目をした黒い蜘蛛。

数万匹にも増える恐ろしい蜘蛛。

何なの?魔神の特売なの?


「土金水(どごんすい)」と、ボクは得意の属性である水を主とした術式を構成した。かつ、地下水を利用して、水龍にまで威力をあげて放つ。

そこでよくわからない事が起きた。


黒い蜘蛛は人の姿を取り、人となる。

腰まである黒い髪、赤い目、白い肌。バディに教えてもらった最高位の司教の法衣。

そしてボクの放った水龍は方向を変えてボクの方に向かって来る。


ボクは慌てて回避する。

またギリギリで回避できるように仕向けてきたとか。

はは、遊ばれているのか。このボクが。


あ、また目玉が取れた。


<わらわを誰と心得るや>

脳裏に響く声。

「ひぃ」思わず後ろへ飛んだ。

お前は呪い其の物。

妖魔の根源。

はは。

「ははは、あははは。くくく」笑うしかなかった。

<わらわを誰と心得るや>

また脳裏に響く声。

「お前は妖魔の根源。王の中の王。だがなぁ、ボクだってただではやられない」

心臓を貫かれる。

<あらぁ、やるじゃない>身代わりの府だ。

距離を置いても脳裏に響く声は聞こえる。

ボクは逃げ出した。まだ府は何枚も、何千枚と用意してある。逃げ切れる。


<わらわを誰と心得るや>

脳裏に響く声が止まらない。

「おごぉ」と、ボクはこけた。

右足が消えている。

府を使い、回復する。

身代わりはまだまだあるんだよ。

<わらわを誰と心得るや>

目の前にそいつはいた。

「う、うわぁああああああ」とっさに後ろへ走る。

走ったはずだった。

後ろを向いたはずだった。

まだ目の前に妖魔の根源である少女の姿をした奴がいる。


心臓をつかまれる。

府はまだ何枚もある。

<わらわを誰と心得るや。もう身代わりは効かぬぞよ>


え?





うそだろ?





身体動かないよ。


府を使うには呪力がいる。

え?

呪いの力の根源。


あ。



制御されただけ?


いつでも制御できていた?


最後まで遊ばれていただけ?


うそだろ?


少女に頬を舐められる。

「ひぃひあああああああああああああああああああああ」

涙、よだれ、尿、糞…その全てを身体から排出し、ボクは・・・ボクはぁぁああああ


「ごちそうさま」それが最後に聞いた言葉だった。

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