0-5 はぁはぁ、俺たち盗賊団。なめんなよ

400人にも及ぶ大盗賊団アラジン。今日は地下神殿で宴を開いている。

「頭(かしら)ぁ、何か迷い人が来ているみたいでやす」

「迷い人だぁ」

「ここを自分のアジトにしたいって言ってやすよ。何かあたまの弱いお嬢様じゃないですかねぇ」

「……。殺してもいい。とにかく連れてこい」

「分かりやした、頭」

伝令の男はニヤニヤ笑い、階段を上がって、大きな扉を開け、洞穴まで戻る。

空を見上げていた。

長い黒髪をしていて、赤い目をした少女は。

月明かりに白い肌が映える。

「今宵はよい月ねぇ」などと呟いている。

「はん。やっぱりおのぼりさんかよ」と、伝令の男が腕を上げると、十人の男たちが後ろから集まって来る。

「へへへ」「けけ」「ひゅー」などと、男たちは声を出す。自分たちこそ捕獲者だと言わんばかりに。

紫の司教の法衣を着た少女から黒いオーラが湧き上がる。



黒い糸が伝令の男を始め、後ろにいた男たちにもつながって行く。

影ぬい。

影をつかまれた男たちは自分たちが動けない事に気づいて行く。

「おい、何で動けないんだよ」

「こっちもだ。どうなってやがる」

「あ、あひぁ。あひぃやあああああああ」と、絶叫しだす男もいる。

避けんだ男は黒い蜘蛛へ姿を変える。

黒い蜘蛛の目は赤い。

その数は数千匹。

蜘蛛たちは男たちを無視して先へ進んでしまう。

その上動ける事も分かる。

「おい、逃げるぞ」と、誰もが一斉に走り出す。



「はい、ごちそうさま」


少女の声だ。

脳内に響く声だ。

今、何かが確定した。

男たちは走る。

「走れぇ、はしれーーーー」と、伝令の男は叫んでいる。

一歩進むごとに足が地面に沈んでいる。

錯覚とかじゃなくて、足が地面に沈んでいる。

少しずつ、少しずつ。

少しずつ。


「案外、いい声で鳴くじゃない。好きよ、リティア。」


脳内に響く。

仲間たちが黒い蜘蛛に変わっていく。


断末魔を上げることすら叶わず、蜘蛛になっていく。

数万匹の蜘蛛たちはまた少女の姿を創り上げて、下の階へ降りて行く。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る