0-4話 俺は全属性の魔術師、スバル。
スバル。それが本名で、王国からはジークフリートと英雄扱いを受けている。俺は全属性の魔術師だ。辺境伯の第三女が大悪魔指定された。人間では初めての事。サクッと倒して酒代にでもしてやろう。そんな軽い気持ちで、討伐に赴いた。
何せ今までの大悪魔たちは、俺の魔法で一撃だったのだから。自惚れるのもわかってもらえるかもしれない。いや、そんな事はいい。
ただ何か違和感を感じ始めていた。
「何故だ、なぜ魔法が不発で終わる」独自に編み出した召喚魔法フェニックス、リヴァイアサンが何故か不発に終わった。相手の紫の司教の法衣は汚れてすらいない。
「あらあらぁ、もう終わりなのぉ」と、リティア・ウィズ・クラインは首をかしげている。黒く長い髪、赤い目、白い肌…何だろう…外見だけ見れば、とても弱そうな感じすらする。それに姿からして幼い。では何故不発なのか。俺が術式を間違えたとでも?くっ、神の杖を使うか。できれば温存しておきたかったが。
「悪く思うなよ、お嬢ちゃん」と、自分よりも背丈の低い女の子相手に大人げないとも思う。それに大悪魔程度に、神の杖を使うのは初めての事だ。
詠唱破棄を使用し、炎の大精霊を呼び出して、神の炎を喰らわせてやる。大悪魔リティアは天を見上げている。余裕だな。避けれる自信でもあるのだろうか。大精霊は召喚した。あとは杖を振り下ろすだけ。
大悪魔リティアは歩いてくる。
気でも狂ったか?
俺は容赦なく振り下ろす。
杖から、灼熱の炎が大悪魔リティアに向かってほとばしる。即死だ。
あっけない勝負だったな。
灼熱の炎はリティアに直撃したように見えた。
なのにどうだろう。灼熱の炎となった地面の上を堂々と歩いてくるではないか。
何だ?何だこの光景は。
これは何だ?
ありえないだろ。
あいつは何だ、なんなんだ。
「お兄さん、もしかして魔術師なの?」と、大悪魔の声が聞こえる。
「な、どこだ?」と、右を反射的に見てしまう。
「目の前にいるよ」
「ひぃ」と、俺は後ろへ下がってしまう。
「ねえ、魔術師なの?」
「ち、近寄るなぁああああああ」と、俺は炎、氷、風の刃、岩石を同時に打ち出す。
どういうわけか、魔法はすべて吸収された。
「……魔力の根源に魔法を撃って楽しい?」
「は?」今何と言った?魔力の根源?
「うふふ。いい顔するわねぇ。いい感じに絶望してるじゃない。」
リティアは突如、髑髏(どくろ)の仮面を被る。両手には死の大鎌が握られている。
「タナトス?冥府の番人?魔王だと言うのか?」
大鎌は赤い目をした黒い蜘蛛に変化する。
「冥府の大蜘蛛?何だ、何が起きている。ありえない、ありえない、ありえなぁいいいいいいい」
「リティアだよぉ。」と、リティアは仮面を外して俺の耳を舐めてきた。
「あぼぉおおおお」
「ごめんねぇ。我慢できなくて、心臓食べちゃったぁ」
「……」
「食べて」と、俺は投げられた。
残った意識で最後に見たのは黒い巨大な狼。、暴食のフェンリル。
ああ、間違い無い。
こいつは大悪魔なんかじゃない。
魔王ですらない。
その根源。
悪魔の王の根源。
王の中の王。
なんでそんな奴が…受肉しているんだぁああああああ。
バクっ。
「なかなかいいエサだったねぇ。次はどんなエサが来るかなぁ」と、リティアはまた空を見上げた。
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