天動説

「ちなみにサソリは東方の国では薬にもなっているそうだ。つまり身体に良いんだぞ?」


「東方の国ってどこよ? 知らないわよそんな話」


「まぁ、東の果ての国までは行かないが、とにかくここから遥か東ってことだな」


「それよ!」


 ミランダが突然叫んだ。


「なっ⁉︎ なんだよ?」


「東の果てがあるように、私は西の果てまで行きたいのよ」


 ミランダが食い気味に答える。


「東の果てもそうらしいが、西の果てもその先はずっと海が続いているだけらしいぜ」


 俺がそう言うと


「その海の先に西極点があるのかしら?」


 ミランダがおかしなことを言い出した。


「なんだよ? その西極点って?」


「北には北極点、南には南極点があるんでしょ? だったら西にだって西極点があっても不思議じゃないじゃない?」


「残念ながら、その海の先をさらに西へ進むと、ぐるっと一周回って東に戻ってくるらしい」


「なに馬鹿なこと言ってんのよ?」


「いやお前こそ、とんでもない馬鹿だな」


 まさかいまだに天動説を信じている奴がいたとは……。


「あんた、実際に西の果てまで行ってそれを確かめたわけじゃないんでしょ?」


「まぁ、確かに聞いた話だけどな」


「だったらこの目で確かめてみないと納得いかないじゃない! それにあんたの言う通りならこのまま西に行けばいつか東に戻ってくるんでしょ? さっき戻れって言ってたんだし、何か文句あるわけ?」

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