Would you like something to drink?

「はぁ〜、退屈ね〜。あんたなんか言いなさいよ」


 しばらく無言で歩き続けると、女が話かけてきた。


「なんで西に行きたいんだ? 西に行ったら何かあるのか?」


「言いたくないわ」


「なんで東から来たんだ? 東で何やってた?」


「関係ないでしょ。いちいち女の過去探ろうとするなんてサイテーね」


 ちっ! お前のほうから話振ってきたんだろうが!


「じゃあ俺の身の上話でもするとだな……」


「興味ないわよ。あんたの過去なんか、まったく、これっぽっちも」


 ほほおぅ……。


 それからまた、しばらく無言で歩き続ける。


「はぁ〜、退屈ね〜」


「ほらよ」


 俺は持っていた水筒を彼女に渡した。


「何よこれ?」


「ただの水だよ。酒のほうが良かったか?」


 怪訝そうな女に俺は答えた。


「そういうことじゃないわよ、どうしてって聞いてるのよ」


「適度な水分補給は必要だ。熱中症で倒れられてもかなわんしな」


 あれからもうだいぶ歩いていた。会話は気を紛らわしたかっただけだろう。


「有難う。いただくわ。もうカラカラ」


 そう言って彼女はグビグビと水を飲んだ。そして


「ミランダよ」


 水筒を返しながらそう言った。


「何だ?」


 俺が受け取りながら言うと


「だからミランダよ。わたしの名前。まだ言ってなかったでしょ」


 勢い余ってこぼれた水でミランダの胸元のシャツが透けていた。俺は水筒の水を口に含み


 ―― ゴクリ


 生唾とともにそれを飲み込んだ。


 あっ、これって間接キスじゃん?

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