第6話 シェーン
「どうすればあえるかな?」
自室へ向かう中、エリザベスと約束した青の騎士との面会の方法を考えていた。
侍女長に聞いてみればわかるかも。
「サリ」
物陰からヌッと、アレックスが姿を現した。
「・・・殿下、どうなさいましたか?」
数歩後退し距離をとる。
「今日は一回も共に食事を摂れなかったじゃないか」
不思議そうに首を傾けた。
「昨日殿下からご助言いただいた通り、講義に出席してました」
それとなく気を使いながら話をする。そうでないと何となく私の侍女長や侍女、ないと思いたいがエリザベスにも危害が及ぶのではと考えたからだ。
初めて会った日から、そんなことを脳裏で考えてしまうほど、危機感のない私でも警戒するほどにこのアレックスという男からは危ない何かを感じた。
普段は侍女長や侍女が付き添っているが今は私ひとりだ。
そのことにもっと考えを巡らすべきだった。
「サリは僕の言いなりなんだね、それでこそ僕のサリだ!」
驚いた。急に大声を出したと思ったら、大股で近寄ってきて、抱き着いてきたのだ。
「!!!」
声なんか出ない。恐怖でしかない。拳で肩口を叩くが興奮したアレックスは気づかない。
怖い!!!!!!!!!!!
「何をされているんですか?」
アレックスを引きはがし、私を守るように間に割って入ってきた長身の若い男。背中の外套には騎士団のユニコーンのエンブレムがついていた。
「王族直属の騎士団・・・」
アレックスの顔が急に恐怖で慄いていた。
「ヒ・・・ヒイイイィイイ!!!」
目を見開き絶叫しながら手と足を揃えて走り去った行った。
アレックスの姿が見えなくなったところで騎士団員は私の前で跪いた。
「遅れて申し訳ありませんでした」
何が起こっているのかわからなくてただただ彼を見下ろしていた。
「サリ様!!!」
侍女長が駆け寄ってくる。
「大丈夫でしたか?!」
お怪我は?と、泣きそうな顔で私の顔や頭を撫でまわした。
急に力が抜けて、涙が零れた。
力が入らない体を支えられ、自室にもどった。
侍女長の話だと、私が講義に出ているときに陛下から呼び出しがあったらしい。話を聞くと私に護衛騎士を与えてくださったとのことだった。
講義が終わる時間に侍女長と護衛騎士が講師室に向かうとすでに私は退室した後で1時間近く私を探し回っていたとのことだった。
「どこにいらっしゃったのですか?」
侍女長が入れてくれたココアをすすりながら、どう誤魔化そうかと考えを巡らしていたが変に噓をつくと今さっき会ったばかりの護衛騎士は騙せても12年の付き合いになる侍女長は騙せないため言葉を濁すことにした。
「少し庭園を回っていたら迷ってしまって、庭園のベンチに座り講義の振り返りをしていました」
侍女長の隣には護衛騎士が立っている。騎士自体見慣れないため思わず目を逸らすことを忘れる。騎士は直立不動だった。
侍女長は訝しんだ様子だったが安堵のため息をついた。
「そうですか、何となく腑に落ちないですがまあ、わかりました」
何とか落としてくれ、頼む。
「・・・あの、お名前を伺っても?」
何とか話をすり替えようと護衛騎士に話しかけてみる。
すると再び、傅く。
「王家直属護衛騎士団副隊長シェーンと申します」
お・・・?
「本日より王命を受け、サリ様の身辺警護を承りました」
身辺警護?
終始キョトン顔の私に侍女長が一つ咳払い。
「サリ様の護衛騎士としてこれからはシェーン様と行動を共にしていただきます」
「え?!」
それだとまるっきり自由が利かなくなる。そう言おうと思ったが、先ほどの侍女長の
私を心から心配しきっていた表情を思い出すとわがままなことは言い出せなかった。
「・・・これからよろしくお願いいたします」
時間は深夜2時頃だろうか。全く眠れない。ココア効果で気持ちは落ち着いたが目が冴えてしまっていた。
ふと、自室の扉の向こうが気になる。
護衛騎士なんて就いたことがなかったためもう休んだのかゆっくりと扉を開けて確かめてみることにした。
「どうかなさいましたか、サリ様」
開けた扉は数ミリだったのにすでに気づかれてしまった。
扉の向こうではシェーンが扉を背に立っていた。しっかり顎を上げ見上げないとシェーンの顔が見えない。外套のエンブレムとその姿には不思議な感覚を覚えた。
「今日は助けてくれてありがと」
閉じかけた扉の隙間から言い忘れていた言葉を伝える。
シェーンは少しだけ振り向き笑った気がした。
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