最終話 これで本当に合格ですか?

 「ジアー、いるかー?」

お昼過ぎにゼンがうちに来たの。何の用かしら?

 「アサギ先生がジアを役場に連れてきてって頼まれてさあ」

アサギ先生が? まさか、昨日のオバケキノコの事でさらに怒られるとか?!

 私は怒られる覚悟で恐々こわごわとゼンと一緒に役場に行ったわ。

 役場の部屋の一つに案内されると、村長さんと、アサギ先生と昨日会ったワイトさんとラックさんがいたの。

 「よう。昨日は大活躍だったな。調子はどうだ? 

あのキノコ、食べると一時的に穏やかな性格になるらしいからなあ」

ラックさんにそう教えられたわ。

だからお母さんあんなに優しかったのね。

 「ジアさん、来ましたね。では」

アサギ先生はそう言いながら、ワイトさんに渡された見習い用の小さな鍋とある物を私に差し出したの。

「先生、これは?」

「これは、魔法使い仮免許を取ったという証です。風の魔法と空を飛ぶ事が出来るので仮免許が承諾しょうだくされました。よってこれを発行します」

 それは、バッジなんだけれど、羽根とかの模様もようとかキレイな石とかが付いていてステキ!

それにやっと仮免許を取れたわ! やったー!!

 周りからも『おめでとう!』とか拍手してもらったりしたわ。うれしい!

 「これがあれば森でもクマが襲ってきたりしませんよ」

…クマ避けの鈴みたいな効果なのかしら。

 そういえば、

「先生、あの細かく切っていたオバケキノコはどうするんですか?」

「あれは、薬の材料に使うんですよ」

「あれだけ大きいと食べても大味なんだよ」

「貴重な薬の材料なんですよ。アレ」

ラックさんとワイトさんも説明してくれたわ。

「「これがまた高値で売れるしね」」

…ここで大人の事情を聞くとは思わなかったわ。

 「コホン、まあ村の財源がうるおうとかそういう話は横に置いて」

村長さん、売る気満々ね!

 「とにかく、仮免許合格おめでとうございます。

次は魔法使い許可免許を取れるように頑張りましょう」

試験を受けて、許可免許を取れば晴れて魔女を名乗れるんですって。頑張らなきゃ!

 「そういえば、仮免許って私だけですか? ゼンは?」

「クラスメートは全員すでに仮免許を取っていますよ。

空を飛べて、魔法を一種類使えれば合格ですから」

 …そんな条件だったわね、そういえば。

「ま、オレは今度の魔法使い試験を受ける予定だからな。ジアよりも先に取ってやるんだ~」

「…なんか悔しい!」

自慢気なゼンの態度になんだか悔しくなってきたわ!

 「ゼン君、まずは他の魔法を覚えないといけませんよ」

アサギ先生がゼンに言ったの。

「魔法をもう一種類覚えるんですか!?」

「はい。それともう一つ。許可免許試験は魔法の修行を始めてから一年経たないと受けられませんからね」

 と、いうことは、

「私が受けられるのは来年ですか!?」

先が長く感じるわ。

でも、次の魔法を覚えられる期間だと思えば!

「ちなみに火炎魔法とは相性悪いみたいなので別の魔法を覚えましょうね」

 『ぜんとたなん』とはこの事を言うのね…。

でも、私はまだまだ頑張るわ!


                〈完〉

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魔女の大鍋と弟子の小鍋(仮免中) 東寒南 @dakuryutou

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