第7話 風の魔法と子猫と空と

 「…シール・ヒュー・フライ!」

私は葉っぱを数枚手に取って、それに呪文を唱える。

 杖の先に風が起こって葉っぱは空を舞ったわ。

「やったー! 大成功!」

ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ私。そばにいた子猫・パートナーのブラウが、

「成功おめでとうにゃ!」

と、一緒に喜んでくれたわ。

 でも、喜んでばかりはいられない!

 そばに立てかけておいたホウキを手に取ると、それにまたがって、

「飛べっ!」

って念じて空を飛ぶ練習。

繰り返すはんぷく練習が上達のコツなんですって。

 空中で同じ高さで浮く練習、からの木の上へ急上昇!

そのまままた浮く練習。

そしてくるくる回って回転とかに慣れる練習。降りる時は静かにゆっくり。

降りる時が事故が多いから気を付けるようにって言われているの。

 綺麗に着地! うん、我ながら上手く出来たわ!

 「ジアさんは風の魔法と相性が良いみたいですね」

家から様子を見ていたアサギ先生がやって来て誉めてくれたの。嬉しい!

 「では、次はこの猫と一緒に空を飛んでみてください」

そう言われてブラウがビクッとしたの。

「ブラウ…怖いの?」

ブラウは私を見ると、

「…実は高い所からのジャンプもちょっと怖いにゃ」

 だから家で高い所から降りる時、おっかなびっくりだったのね。でも、

「練習付き合ってね」

そう言って私はブラウを抱っこするとホウキにまたがったわ。

 ブラウは嫌そうにしていたけれど、少し浮いたところで、あきらめたみたいで静かにしていたわ。

「ほら、高い所も案外いいんじゃない?」

「…地面に足が着いている方がいいにゃ」

私にピッタリ寄り添いながら怖いのか震えていたわ。アクロバット飛行をしてみたかったけれど、静かに空中遊泳にしましょう。

 ゆっくり上空に浮いていった所で、

「ねえ、あっちの空を見て!」

「なんにゃ、何にもない…」

そう言いながら言われた方を見るブラウ。

「あの色んな色の輪っかみたいなのはなんにゃ?!」

 そこには大きな虹が空に映っていたの!

「キレイでしょ? 虹って言って、雨が降った後、天気になると見られる事があるのよ」

「初めて見たにゃ!」

 虹を見たのが初めてだからか、ブラウは興奮したみたい。でも、やっぱり怖いみたいで私の服にピタッと張り付いていたわ。


 地面に降り立ったんだけど、ブラウが張り付いた時に爪を立てていたみたいで、私の服にぶらんとぶら下がっていたわ。

「ねえ、大丈夫?」

「…爪が取れないにゃ」

 早く地面に降りたくてブラウはバタバタしていたけど、爪が中々取れなくて結局アサギ先生にも手伝ってもらって服から引きはがしたの。

 「洋服、穴が空きませんでしたか?」

「ちょっとだけ…」

「…ごめんなさいにゃ」

さすがにブラウも穴を空けたことを悪いと思って反省したみたい。

「…しばらく猫、ブラウと一緒に飛ぶのはやめた方がいいですねえ」

「そうですね」

「…ごめんなさいにゃ」

 私ももう少し上達して安心してブラウを乗せられるようにならなくっちゃ!



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