第6話 薬の調合は見習いは小鍋で

 「では今日はこの鍋を使って薬を作ってみます」

 今日は学校で特別授業の日。先生が外にかまどを作って取っ手付きの鍋を用意していたの。

「2つの班に別れて作業しますよ。準備はいいですか?」

 「先生ー、何のお薬を作るんですか?」

私が聞いてみた。

「これは、なんにでも効く万能薬なんですよ」

 「先生、エリクサーを生徒に作らせようとしないで下さいね」

そばで見ていた校長先生がアサギ先生に声をかけたの…エリクサーってあの高級回復薬?!

「分かってますよー校長先生。エリクサーは個人的に作りますし、見習いや仮免許の人は作れない決まりになってますから」

ニコニコしながら校長先生に説明するアサギ先生。

それにしても、エリクサーって一人前にならないと作っちゃいけないんだ。

 「ではこの薬草をこのすり鉢とすりこぎでゴリゴリすりつぶして下さい」

 皆で交代しながらすりこぎを動かし続けたの。薬草だからけっこう匂いがするのね。

「すりつぶしたらこの鍋に入れて、次の薬草をすりつぶして下さい。全部で三種類すりつぶしますからね」

 すりつぶす作業もけっこう疲れるのね。交代しながらだけど腕がけっこう疲れるわ。

「力任せだと疲れるからこういう風に」

そう言いながらゼンが教えてくれたの。ゼンって教え方が上手ね。

 「では、3種類この鍋に入れたら水をこの水差しで1つ分入れてから火にかけます」

 先に組んであるかまどにたきぎを入れて、紙に火をつけて燃やしていったわ。パチパチという音と一緒にグツグツ鍋の中の薬草が煮えてきたの。

 「では焦げないようにかき混ぜながら煮てください」

こぼれないように混ぜて混ぜて、段々お湯が少なくなってきたわ。でも…、

「先生~、臭いが」

独特の臭いがあたり一面にただよってきたの。

「はい、だからお外で作業をおこなっているんですよ~」

 …どうして外で授業をやるのかよーく分かったわ。

これは教室でやったら、ずっと臭いが取れなさそうだもの。

ドロドロになった薬を用意していた小さな壺に入れて、油紙でフタをしてツタできっちり縛って完成。

ふー、疲れた!

 ところでこの薬は何の薬かしら?

「では、この薬は羊や牛が調子が悪そうな時に使ってくださいね」

「「「はーい!」」」

元気にお返事をする皆。

 「動物用のお薬ですか?!」

「そうですよー。人には絶対使わないでくださいね」


 授業が終わった後、先生に呼び出された私。

何の用かと思ったら、

「ジアさん、これを開けてみてください」

先生から小さめのかごを渡されたの。中を見てみると、

「先生、これ、子猫ですか?!」

「そうですよ。先生からのプレゼントです。

これからこの猫があなたのパートナーになりますからね」

中には小さなメスで茶色の虎縞とらじまの子猫が入っていたの! 可愛い!

「先生! ありがとうございます!」

思わず子猫を抱き上げてギューっと抱きしめちゃったわ。すると、

「…苦しいにゃ」

声が聞こえて周りをキョロキョロしたんだけど、

「ここにゃここにゃ」

目の前の子猫ちゃんから聞こえたの。

 「パートナーとなった動物はあるじとお話が出来るんですよ。名前を付けて大事にしてくださいね」

なんだか本当に魔女になったみたい!

 まだ見習いだけどもっと勉強しなきゃ!

「ジアさん、魔法の勉強もですが、学校の勉強もしっかりしてくださいね」

 …先生に心を読まれたかも。

でも、どっちもがんばるわ!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る