第1話 魔女ってホントにいるの?

 ガタゴト揺れる馬車の中、眼が緑色、髪の毛が茶色の少女が母親らしき同じ髪色の女性と男性が乗っている。

 「ねえねえお母さん、今度引っ越す町に魔女が住んでいるって本当なの?」

 王都から引っ越し先へ向かう乗り合い馬車の中、私は向かいに座っているお母さんに聞いてみた。

 「さあ、お母さんが生まれてからは、見た事が無いからわからないわねえ」

 首をかしげながらお母さんは答えてくれた。

「ハッハッハ、お嬢ちゃんは魔女に会えるって信じているのかい?」

乗り合い馬車で一緒になったおじさんが私に聞いてきた。

「うん! だって魔法でドレス出してくれたりホウキで空を飛んだり色んな薬を作れるんだよ!」

「うーん、そういう魔女はお話の中だけだねえ。今は新しく魔女や魔法使いになりたがる人が少ないから、まずお目にかかるのは難しいそうだよ」

 「そうなの?」

「ああ。それに難しい試験があって、それに受からないと魔女や魔法使いを名乗れないんだとさ」

 「試験…? テストみたいなの?」

テストかあ、ちょっと苦手だけど。

 「おじさんはここでお別れだよお嬢ちゃん。魔女に会えるといいね」

「うん! おじさんありがとう!」

 私は大きく手を振っておじさんとお別れした。

 「ジア、まだ先は長いそうだから少し休んでいていいわよ」

お母さんにそう言われたけど、私は興奮していたからまだ眠くなかった。

 それに、段々と道がガタボコになってきたから馬車も揺れて、気を付けないと頭をぶつけそうになっちゃうんだもの、眠れないよお母さん!

 夕方になって日が暮れてきてからやっと町に着いた。

 町って言っていたけど、ドゥーンという名前の村で、牧場とか農家をやっている人が多いんだって。

仕事で先にこっちに来ていたお父さんが私達を出迎えてくれたけど、なんだか王都にいた時よりも顔色が良いみたい。

 「長旅ご苦労様。疲れただろう? 家はすぐそばにあるから今日はゆっくり休むといいよ」

「あなたありがとう。空気が良くてのどかそうでいい所みたいねえ」

「ああ、ストレスで胃がやられる事もないからすごく良い所だよ!」

 お父さん、そんなに王都での役場の仕事嫌だったんだ。

 私達は大きな家に案内してもらったんだ。

この辺では普通の大きさなんだって。

庭があるから花を植えられるって、お花好きなお母さんが喜んでいた。

 「近所の人達に色々野菜とかを貰ったから父さん、ご馳走を作ったんだ。一緒に食べよう」

 テーブルには沢山の野菜料理が並んでいた。

どれも皆美味しかった!

そういえばお父さんは料理が得意だったっけ。最近は調子が悪いからって作れなかったんだった。

 あっ! お父さんに肝心なことを聞くのを忘れてた!

 「お父さん!」

「えっ、な、なに!?」

急に私に声をかけられてビックリしたお父さん。

「この村に魔女がいるってホントなの!?」

お父さんは私をじっと見て答えてくれた。

「ああ、いるよ。でも、もうお休みの時間だから探すのは明日からだね」

 そう聞いちゃったら眠れないじゃないお父さん!

 そう思っていたんだけど、ベッドに入ったらすぐに寝ちゃった。

 探すのはまた明日…ぐうー。

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