第5話

 トシちゃんが私の肩を抱く、目を瞑り身を委ねる。その力はとても八十八歳とは思えないほど強い、

 私もそのままトシちゃんの肩に手を回し、力一杯抱きしめる。


 感触が伝わる、力が入る、これが愛の力なのか、まるで若い頃に戻ったようだ。


 うっすら目を開くと、そこには短髪の黒髪で筋肉質、青年の姿をしたトシちゃんがいる。風でなびく艶のある髪、張りのある肌、膝も痛くない、腰も伸びている。


 間違いない、私も今、若返ってる――――



「トシちゃん、あなたと、一緒にいさせて下さい」








 声が聞こえる。

 息子夫婦なのか、やけに大きな声で叫んでいるようだ。



「母さん……さん……救急車……早く」


「……かりして……お母…」





「うるさいね、私ゃ今、恋愛してんだよ」




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