第4話
◆◇◆
「メガネ岩、メガネ岩っと」
息子が探してくれた場所はまさにトシちゃんとの約束の場所だった。
「母さん、ここでいいかい?」
私は無言で二回、頷き車から降りる。かつて、トシちゃんの家があった場所は大きな公園になっていて、苦労して登った山はすっかり楽に行けるようになっていた。
メガネ岩を見られるようにベンチまで造られてある。
私はそこに座り、メガネ岩を眺めた。
「あの……隣、よろしいですか?」
背中に声が当たった。「はい、すみません」と、私は振り返り声の主を見て驚愕した。
「え?」
声の主は私の隣に座り、メガネ岩をじっと見ている。
「……も、もしかして」
「ご無沙汰だね、よっちゃん」
やはりだ、トシちゃんだ、あの時の、年老いたトシちゃんは、前を向いたまま、私に横顔を見せている。
「い、い、生きて?」
突然鼻の中がツーンと痛くなり、涙が溢れる。
「あの空爆で亡くなったと思ってた」
「僕も、よっちゃんに会いたかったよ」
言わなければ、あの時、言いたかったこと、もう、こんな歳になっちゃったけど……
「トシちゃん、私、トシちゃんのこと」
「待って、よっちゃん。その先は僕が言うんだよ」
「ト、トシちゃん……」
「ずっと、一緒にいてくれますか?」
「……はい」
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