第49話 告白
初めてのキスには特別感があった。子供同士がふざけてするキスでも、外国人が挨拶でするキスでもない。まぎれもなく愛する人と交わすキスだ。
喋るために唇を離すと、俺が惹かれた実梨の瞳には雫がたまっていて、水槽の明かりで光っていた。
「好きだよ」
やっとの思いで伝えると、実梨は嬉しそうに口元の口角をあげた。今にも泣きそうなのにそんな顔されたら抱きしめたくなる。
「順番、違くない?」頑張って声をだしたせいか、たまっていた雫が頬を伝う。
「雰囲気に呑まれたというか……、ごめん」恥ずかしくなり、顔が熱くなる。
確かに、告白に自信がなければ最初にキスなんてしない。告白が成功してからキスをするものだ。それでも告白を後にしたのは、欲がでたんだと思う。
嫌われたかな。元々、俺は恋愛対象外だったわけだし。そんなやつにキスされたら嫌に決まっている。
「私も好き、大好き」涙を指で拭う。
その言葉を聞いて驚き、少しだけ口を開けた。何度も瞬きをした。
「……嘘?」
「本当だよ。この空気で嘘言うと思う?」
「だって、新木さんに話してたじゃん。俺は恋愛対象外だって」
「言ったじゃん。私達が幼馴染だってこと隠してるから」
もう一度、頭の中を整理しようと思ったけど、嬉しすぎて考えられなかったからやめた。それよりも、もう一度、実梨からの告白を聞きたい。
「もう一回、聞かせて」
「いや」
「頼む。一生のお願い」両手をあわせる。
「ここで一生のお願い使っていいの?」
今の俺にはその言葉の意味がわからなかった。実梨のことだから、もっと先のことをしっかり見据えてるんだと思う。それでもわからなかったけど……。
水族館を満喫した後は、イルカのキーホルダーをお揃いで買った。俺は青色で、実梨は桃色だ。
「鞄につけようかな」
「どっちの?」
「学校」
嫌がると思った。でもそんなことなかった。
「私もつける」大事そうに両手でイルカを包み、胸にあてた。
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