第43話 らしさ

「伝えたいこと?」

「……今週、クリスマスだろ?」

「うん」


 家の前に着いて、立ち止まった。


「二人で出かけたいなって」


 思ったより、クリスマスを誘うことに緊張しなかった。俺のことを好きになってもらってから伝えるつもりだったけど、現実は上手くいかないな。


「25日の10時にここね」

「え?」

「今日買った服着てきてね」

「えっ、待って。それって……」

「何よ、自分から誘ったくせに。行きたくなくなったの?」


 これは、了解してくれたってことでいいんだよな。


「行く!」少し大きめに声が出た。

「ふふっ。じゃ、またね」


 家の中に入っていく実梨を見届けた後、俺もドアを開けて家に入った。鍵をかけたドアに背中をつけて一息つく。


「よっしゃ」


 思いっきりガッツポーズをして、一人で喜んだ。

 思い返したら漫画に描いてあった。遠回りするより、まっすぐに伝えたほうが伝わりやすい。好きになってもらいたいからって焦ったのが欠点だ。

 もう変に俺らしくないことをするのはやめよう。

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