第42話 背伸びは逆効果

 この後は特にすることもなくだらだらと歩き回っていると、近くに本屋が見えて寄りたくなってしまった。


「本屋寄る?」


 いつも本を読んでいる俺に気を遣ってくれたのか、実梨は提案してくれた。


「いや、いいかな」

「え? いつも寄ってくのに」

「それより、あそこ入ってみよ。アクセサリーとか売ってる」


 正直、アクセサリーに関してはよくわからない。でも大人っぽいところを見せたいから今日は背伸びするんだ。

 そして、帰る頃には日が沈んでいた。遅くなると心配性な実梨の母さんが心配するから駅に行き電車に乗った。最寄り駅に着いて改札を抜けると、今日一日のことを振り返った。


「オムライス美味しかった」

「うん! 洋服も買えてよかった」

「俺も」


 言わないと。クリスマスを一緒に過ごしたいって。はやく言わないと他の人に捕られてしまう。


「佑樹」

「ん、ん?」驚いて返事が遅れた。

「今日、本当に楽しかった?」


 様子がおかしい。さっきまでの笑顔がなくて、不満そうだった。


「ずっと私に合わせてくれてたよね。嬉しかったけど、今までの佑樹じゃない。無理してない?」


 少しだけ改めてみた。服には元々興味があったから、二人で服を選びあって購入したのは楽しかった。でも、普段なら絶対に足を運ぶ本屋には寄らなかった。アクセサリーには興味がないのに、実梨が喜ぶと思って寄った。ブランド物だって名前を聞いたことがあるだけで詳しいことは知らないから、商品を見ても何がすごいのかわからない。全体的に、途中から無理をしすぎた。とりあえず、かっこいいところを見せたくて実梨に合わせていたところはある。結局、かっこいいところは見せられていないけど。


「……ごめん。楽しかったけど、少し焦ってた」

「どうして?」

「本当は、伝えたいことがあったんだ」

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