第41話 選びあい
「この後さ、どこ行きたい?」
「服! 冬服買いたいなぁ」
「いいね。俺も買いたい」
「……洋服に興味持ち始めたんだ」
「まあ、うん」
クリスマスに着ていく服を探していたら、今着ている学校の制服以外にまともなものがなかった。大学に入ったら、学校に制服があることのありがたみを感じるんだろうな。
「私が洋服選んであげる。いいでしょ?」
本当は俺からその言葉を言うはずだったのに。
「じゃあ、俺も実梨の服選ぶ」
「遠慮しとく~」
「えええ?」
「嘘だよ~、楽しみにしてるね」クスクスと笑っている。
完全にナメられている。俺にはファッションセンスがないと思われている。
あながち間違ってはいない。俺にはセンスの欠片すらない。中学の美術は、ペーパーテストは良い成績をとれたけど、技術のほうは毎回C判定だった。実梨はそれを知っているから、俺に色彩のセンスがないと思っている。
美術の授業と服を選ぶセンスは違うというところを見せてやるんだ。
「わ! 可愛い!」
選んでやった服を着てもらうと、かなり似合っていた。俺が選んだのは白のタートルネックのニットに黒いロングスカートだ。結構無難だ。センスがいいかはわからないけど、個人的に彼女に着てもらいたい服だった。
「佑樹。どう?」
「似合ってるよ」
「そ、そう? ありがとう」嬉しそうに照れている。
今度は俺の服を選んでもらった。試着室で選んでもらった服を着ていると、少しだけ違和感があった。少し薄い、白のタートルネックの上に紺色のトレーナー。下は大きさに少し余裕のあるライトグレーのズボン。
普段、俺が着る服とはかけ離れている。ワンランク上というか……。
実梨に見てもらうと、納得するようにうなずかれた。
「うん。やっぱり大人っぽい服が似合う」
楽しそうだった。
「これ買おうかな。実梨はどうする?」
「買う!」
お互い会計を済まして店を出た。
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