第35話 ぎこちないけど
「私はいいよ」
「えー。前後の席なのに?」
「うん」
「前から思ってたけど、実梨って澤田君に興味なさすぎない?」
「あはは」
軽く笑って俺の話をやめた。俺に興味なさすぎて少し悲しくなる。
チャイムが鳴ると、先生が教室に入ってきたからみんな席に着き始める。実梨は一瞬俺の顔を見たけどすぐそらして椅子に腰かけた。今、目が合った時に挨拶すればよかった。
でも、運よく朝のホームルームがすぐに終わった。
「実梨~。先にロッカー行ってて」
「おっけーい」
ロッカーに行く実梨の後ろをついていく。廊下に出ると、みんなまだ教室にいたから実梨と俺以外誰もいなかった。
「実梨」
「んー?」ロッカーから教材を取り出すのに集中している。
「お、おはよう」
「……おはよう?」
なぜ疑問形。ぎこちないけど挨拶作戦は成功だ。
次は胃袋作戦だ。1時間目の授業中に、昨日と同じように手紙を書いて実梨の机上に上手く投げた。
“今日、弁当持ってきてる?”
“ううん。今日は持ってきてない”
“今朝多く作りすぎたんだ。一緒に食べよ”
“いいよ。どこで食べるのー?”
“屋上の階段”
屋上は鍵がかかっていて禁止されている。だから屋上に繋がる階段を通る人はいない。前、女子の視線が嫌になった時に一週間くらいそこで一人で食べたことがあった。誰にも気づかれないように食べるなら絶好の場所だ。
受け取った手紙の中身を見た時に視線を感じて前を見ると、実梨がこっちを見て口元を微笑ませていた。
”遅刻しないでよね”
誘いを受けてくれたことが嬉しかったから、実梨と目があったとき俺も同じように微笑んだ。すると、実梨はすぐに黒板に目を向けてしまった。
俺の笑顔、変だったかな……。あとで鏡の前で練習しよう。
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