第33話 目標に向けて
このまま二人で恋バナをするのはきつい。「もう寝る。またあとで」俺は隣のベッドに移動して、カーテンを閉めたら布団の中にもぐりこんだ。でも結局、寝つけなかったから6時間目が終わるまで目を閉じてゆっくり過ごした。
その時、俺は決心した。実梨が俺のことを好きになってくれるように、クリスマスまでの5日間で振り向かせると。恋愛対象にしてみせる。
6時間目が終わるチャイムが鳴る前に、保健室の先生はここに戻ってきた。「体調悪かったので少し横になってました」そう言ってすぐに保健室を出て教室に戻ると、数人が俺の元に来て心配してくれた。まぁ、数人って言っても全員女子だけど。帰りのホームルームが始まる頃に実梨は教室に戻ってきて、みんなに心配された後、新木さんと話していた。
「痛そう。体調のほうも大丈夫?」
「どっちも大丈夫! もうそこまで痛くないよ」湿布が貼ってある右頬を軽くさする。
帰りのホームルームが終わった後、俺は急いで家に帰った。部屋の本棚を見ると、数多くある小説が並ぶ中、恋愛小説が1冊だけ挟まっていた。母さんが俺にくれたものだけど、読んでいても非現実的すぎて、夢見がちな登場人物に飽き飽きするから好まなかった。それ以来、恋愛系はこの1冊をぬかして読んでいない。
「母さん!」階段を降りながらリビングに行く。
「どうしたのよ」テレビを見ている。
「母さんの部屋に本ない?」
「恋愛漫画なら、たっくさんあるわよー」
「貸りるよ」
「どうぞー」
母さんの部屋は2階、俺の部屋の隣にある。急いで階段をあがって母さんの部屋に入る。「え!? ちょっと待ちなさい! 佑樹! なんの冗談よ!?」階段の下から母さんが驚いている声が聞こえるけど、無視して本棚にある恋愛漫画を読み漁った。
とにかく、ヒロインの女子が胸キュンするシーンをメモした。絶対に俺が使わないような言葉も、どんどんメモした。「佑樹……、あんたどうしたのよ」母さんは心配そうに俺を見ていて恥ずかしかった。でも、クリスマスまでの5日間で俺のことを好きにさせると決めたから、周りの目なんて気にしないようにした。
「……ふぅ。こんなもんかな」
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