第25話 貸切のプール
プールへ弁当を食べにくる人は滅多にいない。それでも実梨が鍵を開けて入れたのは、水泳部と繋がっているからだ。顧問の教師が甘いから、“泳ぐ練習してきます”と言えばすぐに鍵を貸してくれるらしい。おまけに見張りにも来ない。
今日は、実梨がプールを貸し切りたいと部員の新木さんにお願いして許可を得たそうだ。忘れていると思うから説明すると、新木さんは俺と同じクラスで実梨といつも一緒にいる人だ。
「香織がいなかったら貸し出せなかったよ」
「人脈っていいな」
「佑樹は友達いる?」
「いないよ。聞くなよ。知ってるくせに」ふてくされながら米を口にふくむ。
「私は友達じゃないの?」
表面上、友達ではあるかもしれない。でも友達という言葉で関係性をくくるなら……「あ、友達じゃなくて幼馴染だったね」考えている間に実梨は俺の思っていたことを口にした。
次に話が変わって、また河田さんの話になった。
「さっきの話に戻るけど、河田ちゃんと噂のことしか話してないの?」
「んー、いや。そんなことない」
「何話したの?」
「実梨と幼馴染って話」
「他には?」
「今日はやたらとしつこいね」
彼女に浮気の尋問をされている気分になる。
嘘はつきたくないけど、河田さんに不意をつかれた質問をされたことを実梨に話す気にはならなかった。
「俺たち二人の話だから」卵焼きをほおばる。
「もしかして、また告白されたの?」
「んっ。ごほっ、ごほっ!」
卵焼きのしょっぱさと勘の鋭い実梨に驚いて、喉に卵焼きをひっかけてしまい思わず咳こんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます