第24話 購買のカレーパン

 昼休みになると、教室にいる人が少なくなった。数人の男子はすぐに購買に向かったけど、他の人は他クラスへ食べに行っているのか、学食にいるのか、その他か……。

 どうでもいいことを考えながら、鞄から弁当を取り出そうとしていた。すると、教室の外から、誰かが走っている足音が聞こえてくる。


「カレーパン完売したってよー!!」


 週に1度、購買の商品にカレーパンが追加される。どこのカレーパンかわからないけど美味しいらしい。

 カレーパンを買えなかった男子が教室に戻ってきて、二人で弁当を食している女子に話しかける。


「聞いてくれぇ。4時間目終わってダッシュで購買いったんだよ。もう先輩たちが並んでたんだけど、買えそうだったんだよ。でも今日に限って女の先輩が俺の後ろに、たっくさんいたから、かっこつけて前ゆずっちまったんだ。そしたら俺の目の前で完売したあああああ」

「必至だね」クスクス__女子は笑っている。

 

 男から見ても男は面白い。

 失礼だけど、購買のカレーパンに必死になる姿を想像すると笑ってしまう。

 昨年、1年の秋ごろだったかな。たまたま授業がはやく終わった時、数人の男子がチャイムが鳴るまでドア付近で走る準備をしていたのを覚えている。昼休みになった瞬間、勢いよく教室のドアを開けて飛び出していた。それを見た優しい女子はドアを閉めてくれていた気がする。でも、飛び出していったのは他の教室の人たちもだ。廊下中に大きな足音が響いて、女子が驚いていたな。もちろん、俺も驚いた。けど、男子の変なところで必死になるところが表にでていて面白かった。

 おっと、忘れるところだった。俺も弁当をもって実梨がいるプールに行かないといけない。お手洗いを済ましてからここに戻って回想していたから、5分以上は経っている。“遅い”って怒られそうだ。


「遅い!」


 案の定、怒られた。


「ごめん。考え事してて」

「……河田ちゃんのことでも考えてたの?」


 今日はよく河田さんの話題をだしてくるなあ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る