第20話 あなたの笑顔

「どうしたの。急に黙り込んで」

「なんでもないよ」


 告白のことを考えたら怖くなってきたから、考えるのをやめておこう。


「……文学部受けるんだね」


 さっき眺めていた本棚にある大学受験の赤本の話をしだす。

 将来、特にしたいことがないから、とりあえず得意な分野を専攻しようと思って文学部にしただけだ。深い意味はなかった。


「実梨はどうするの?」

「美容師の専門学校」


 なんとなくそんな気はしていた。でも確信がなかったから聞いてみた。

 俺の髪を切ってくれた時から美容師に向いているとは思っていたから、天職なんじゃないかな。


「また俺の髪切ってよ」

「うん! 今度こそバナナマンの日村さんにしてあげるね」

「あのさぁ。前も言ってたけど似合うと思ってないだろ」


 実梨は楽しそうに笑った。やっぱりこの笑顔が大好きだ。


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