第19話 昔のよう

 話しかけてこなくなったのは俺が女子に人気になってしまったから、か。声をかけたら周りの女子に嫉妬されてイジめられるとでも思ったのかな。

 そんな恋愛漫画のようなこと、現実で起こるのか?


「“先輩に告白された”ことを俺に相談してきたのは、話すきっかけが欲しかったから?」


 この理由で合っていると思った。

 でも、実梨は頬を赤く染めたから多分違うんだ。昔から、何か違うと思うとすぐに頬を赤らめるからわかりやすかった。


「そういうことにしといて」

「いや、教えてよ」実梨のほんのり赤らめた頬をつねると柔らかい。

「冷たい!」すぐに離される。

「ははっ、ぜい肉増えたんじゃない?」

「女の子に言うもんじゃないよ! もう嫌い」

「ごめん、ごめん」からかうのが楽しくなってきた。


 もしも、実梨に好きだと告白してフラれたとする。

そうしたら昔のような関係には戻れなくなってしまうのかな。こんな風に二人でいれる部屋に二人でいられなくなってしまうのかな。こんなに近くで顔を合わせることさえも拒絶されてしまうのかな。


「佑樹?」いきなり黙った俺を不思議そうに見つめる。


 それだけはいやだ。

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