第17話 聞きたかった
「実梨が傷つかないか不安なんだけど」
「大丈夫だよ―。はやく聞かせてって」せかすような態度。
一瞬、どこから話せばいいのかわからなくなってしまったけど、先輩がどうして実梨に告白したのか簡潔に話して、あの放課後に起こしたことを伝えた。
落ち込んでいるかもしれないと思ってゆっくり実梨を見るとそんなことはなかった。何も言わずに、体育座りの状態で身体を丸めて視線だけを斜め下くらいに向けている。
どういう表情なのか読み取れず、何を考えているのかまったくわからなかった。すると実梨は口を開いた。
「本当はね、先週くらいから気づいてた」
「えっ!?」思わず大きな声を出してしまった。「佑樹ってそんな大きい声だせるんだね」クスッと笑った顔はなぜだか嬉しそうに見える。
「なんで知ってて別れなかったんだよ」
「佑樹が怒るかなぁって」
「はぁ? 怒んないよ」少し強めに発言した。
「だって先輩と付き合えって念押ししたじゃん!」
「したけど! 付き合ってからのことは実梨次第だって言った」
「……覚えてない!」
「ていうか、なんで俺に相談したんだよ。高校に入ってからまったく関わってこなかったのに」
ずっと疑問だった。ずっと聞きたかった。でもいつの間にか忘れていた。よく考えたら、実梨が自分自身のことを俺に選択させるのは初めてだ。いつもなら俺のことを人形のように扱うから、反対の立場は慣れていなかった。女友達に相談すればいいものを、なんで俺に相談したんだろう。
__俺から離れて行ったくせに。
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