第14話 修羅場
「なに、すんだよ!!」
思いきり頬を殴ったら俺も殴られた。運動部の拳が強いのか俺の足腰がひ弱なだけなのか、殴られた時に倒れてしまった。でも負けじと起き上がって先輩の襟をつかんだ。「離せよ!」今度は腹に先輩の拳が入って、また地面に尻をついた。
殴られ返されるのが怖いし、殴られた頬とお腹は微妙に痛い。それでも、あと一発だけ殴らないと俺の気が済まなかった。
「まさかあいつのこと好きなの?」
「っ」
実梨のことをあいつ呼ばわりするな。
この怒りが力になったのか、起き上がることができた。
「謝れ」
「あ?」
「実梨に、謝れよ!」
もう一度先輩の襟を握ると、頭突きをくらわした。人に頭突きをするのは人生で初めてだ。そもそも人と取っ組み合いをすること自体したことがない。
頭突きを受けてよろけた先輩は、額に手を添えて地面に尻もちをついた。俺も額が痛いから指で触れると、痣ができているのか少し押しただけで痛かった。
すると悪いタイミングで目の前に実梨がやってきた。
「佑樹? ……先輩?」
目を丸くした様子で鞄を地面に落とした。この光景を見たら俺が一方的に先輩を殴ったみたいだけど、間違ってはいないから弁解できなかった。
実梨は先輩の近くによってしゃがむと、少し赤みのある頬に気づき、すぐ俺に視線を向けた。
「実梨。これは……」
「こいつがいきなり殴ってきたんだ」
西澤先輩は俺をにらんだ。
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