第11話 応援したくない
俺にできることは背中を押すことだ。本当は、できれば俺から離れてほしくない。今ここで好きだと気持ちを伝えてしまいたいけど、これ以上困らせると実梨は泣き崩れると思う。
だからこれでいい。今まで怖気づいて自分から何もしなかった俺が後悔する資格はない。
すべて自業自得だ。
「新木さんに彼氏できたこと羨ましがってたし、丁度いいじゃん」
「それは別だよ。私、西澤先輩に好きっていう気持ちないんだよ?」不安そうに聞こえる。
「付き合ってから好きになる恋愛もあるよ」誰かのブログで見たことがある。
「でも、それで好きになれるのかな」
「それは実梨次第だよ」
「でも……」
「そこまで先輩によくしてもらってたなら、恋人になれば今までよりも大切にしてくれるよ。実梨は抱え込むところがあるから、そういうの吐きだせる相手ができていいと思う」
「っ、ねぇ」
「俺は……」
無視して話を続けると、「佑樹!!」泣きそうな声で怒鳴られた。それでも実梨の言葉を聞かずに最後の一言を言い放った。
「俺は応援するよ」
真っすぐ実梨の目を見て言うと、何か言いたそうに少しだけ口を開けていた。話を聞いてくれないことが嫌だったのか泣きそうな顔をしていることに今気づいて、俺は現実に引き戻された気分になった。
「本当にそう思ってる?」頑張って出している声はかすれていた。
溜めている涙をこぼさないようにこらえている姿が見ていられなくて、早くこの場から逃げたかった。
「うん」
次の日、教室に行くと少しだけざわついていた。耳を澄まして盗み聞きしていると、実梨が先輩と付き合うことになったと噂になっていた。昨日、メールか電話で告白の返事をしたのかもしれない。
__これでいい、俺の選択は間違ってない。
この時はそう思っていた。
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